潮留と築地の中間地点(実際の地理より距離感は詰まっていた)で、小さな女の子を連れた老人に呼び止められる。老人も子供も身なりがいいというか、服が高そうだ。
老人に「恐縮ですがタバコを一本いただけませんか」と言われる。ルーシアとキャメルのメンソールを持っていたが、どっちもD-specだしメンソールだしシトラスだナッティだと香料も特殊な感じのタバコなので「それでいいか」と説明して、と思ったが、要素が複雑でめんどくさい。
「急いでいますのですみません」と断った。我ながらひどい理由だと思いながら。
「地球の重力が少し弱まり、人々のジャンプ力が上がった」という設定からこの夢は始まっています。
で「そうなると各種スポーツのルールや機材なども変わってくるだろう、ならその前にプロっぽい気分を味わってみよう」ということでバスケットをすることになりました。普通の体格の人でも上手く飛べたらダンクができる、ぐらいの重力の減り、という感じだったので。で、人数がそう居たわけではないので、1 on 1でやることに。以下メモ的に書きます。
・なんか別のからみの夢
某アイドルさんとタクシーの運転手と自分の家族(夢の中の)と割とどろどろした話(離婚だ慰謝料だ相続だとか) いう話がありまして(某アイドルと私の父が夫婦だと) んでまあ、なぜか着ているものを洗っていけ、という話になりまして。で、自分の服を探すんですが、スポーツウェア系しかないんですね。しかも「誰が買ったこれ?」というようなセンスのものばかり。比較的マシなものを、というのを選んで着たんですが、なぜか「着てからタグを外そう」と思ったと。で、ハサミで切ろうとしたら服まで切れそうなので、困っていたんですが、知恵の輪的動きで外せることに気が付きました。が、2つほど外したらなぜか頭髪とか頭皮にたくさんタグがついていて。
「これは取れないな」と言っていたら大柄な男性(友人役)がやってきて「それ取らないほうがクールだぜ!」とか言って。で、歩いているうちに下記遊技場的なところに場面が変わり「んじゃリムに届くか試してみようぜ」というところからバスケットに話題が移りました。
また、その上のからみの中で、通路を通っていくと空母のカタパルトみたいのがありまして。私用塗装他特殊なカナードと偏向ノズル仕様のF-15がありました。なんか「模擬戦ワールドカップ」みたいなのの前日でも飛行があるんで云々だとか、上記実家のなんかの商売をやっているおじいさん(外国人)の国のパイロットを最初に落としてやるとか言って家族にたしなめられるとかそういうくだりもありました。
※F-15まわりのくだりはあまり覚えてないんですが、他のパイロットは外国人というよりエイリアンみたいのもたくさん居ました。パイロット同士は非常に和気藹々としたムードなのですが、クルーやら監督やらが「前回優勝パイロット(私)にはハンデがあり、カナードによる特殊軌道ができない仕様になっているが大丈夫か」、とか周りがぴりぴりしていました。カタパルトに上がるところは急激な坂道というか三角形の鉄板(脇に階段とエスカレータ)になっていて、車で上る人も居れば、滑り台みたいに降りてくる人もいたりとかなり「事故がいつ起きても不思議では」というような混雑ぶりでした。
さて、そんなくだりの後、バスケットが始まります。
・このゴールは使えないね
体育館というより「遊技場」のような天井高さや広さが体育館ほどでは、という場所に集まりまして。で、最初に見つけたゴール。なぜか上に棚みたいのが付いています。ボール1個半ほどの空間があり、上に棚、という感じ。これではダンクはできないと。で、奥のほうから普通のゴールを引っ張り出すことになりました。どうも「正確なレイアップ練習用」らしいのですが、実際は意味が無い練習でしょうね。
・特殊ルール1 リムを1.6mの位置まで下げる場合
ボールが凄いデカイぶにょぶにょしたものを使わないといけません。ドリブルもとてもむずかしいし、リムに無理やり押し込まないと入らない。なのでダンク以外ノーゴール。シュートはすべて1点扱い。
・特殊ルール2 リムが通常位置(確か3.05m)の場合
1-攻撃側はシュートで終えるまで、1度だけ「ノー・トラベリング」という「ボールを保持して3歩以上歩いていい」ものを使える。いわゆるダブルドリブルは適用されるため、必ずシュートで終わらなくてはいけない。ノーゴールだった場合、いずれかのゴールが入るまではもう使えない。
↑これもはやバスケではない気もしますが、そのほうが飛びやすいということで出てきたんでしょうね。
2-点数
ダンク-3点、その他-1点(いわゆる3ポイントも無い)
とにかくダンクを狙わざるをえない、という縛りのためのルールなんでしょうね。
3-ずっと俺のターン
うろ覚えですが、1 on 1系のルールは「ゴールが入ったら攻守入れ替えでセンターから開始」だったはずですが、今回は「シュートしたボールがコート内に落ちている限り、シュートした側がボールを取ったらそのまま攻撃を継続できる」というものすごいオフェンス有利のルールとなってました。入れられた側が取ったりコート外にボールが出たら通常の開始になりますんで。
で、バウンド中のボールを再度ジャンプしてキャッチしてそのままドーン! という「1人アリウープ」も何連続でもOKと>無茶だなおい
ただ、リムにぶら下がった状態でバウンドしたボールをキャッチしてドーン!は反則、5点減点扱いと。まあ、やりたければやれ、ということでしょうね。
そんなこんなで始まりまして。で、通常リムで使う通常ボールに空気があんま入ってないね、というので入れたところ、重力の関係もあってか跳ねる跳ねると。これなら1人アリウープも行けるんじゃね? という感じで。
で、5点減点をやるやつがいたり、私他1人アリウープも何度か決まりと盛り上がりつつある中、私とある女性のゲームになりました。
この段階で「1ゲーム中最多ゴール」「優勝(総当り勝数および得失点差)」がかかっておりましたので、女子相手でもやっちゃいますよ、ということで連続1人アリウープなどをやっておりましたところ、ブーブーと非難(笑ってるけど)などがあり、まあそこをいじっていたところ、突然対戦相手が背後からチョークスリーパーをかけてきました。これは!?
4-相手をギブアップあるいは失神させた選手がその段階で優勝
これは首を絞められながら「何だこれ?」と困惑する私に周囲が説明したのですが「全ゲーム中1度のみ、守備側は攻撃側に対して関節技、締め技を使うことができる」というルールがあったと。私はトイレに行っていたのでそこを聞いてなかったんだろう、という話で。んでまあやっていいのは5秒までとか、その中でも3秒ルール(制限区域内に3秒以上留まれない)は有効と。
首絞めてもいいけど3秒ルールは有効ってのがかなり滅茶苦茶ですね。
結局首絞められた状態で夢は終了しました。
※今回はブツ切りの記憶となります。また、ディテールがおかしいところが多かったので解説的なものも書きます。
○競輪
「競輪場に行く。なんかコースが小さい気がする。最初は普通の競輪をしている。おかしなメールが届く。そのうちレース内容が“ママチャリ部門”とかバラエティっぽくなってくる。“50ccレーサーレプリカ(12インチ限定)”とかいうのが始まりそう。“完全ノーマル”ということなので、ならばサスが強いNSRが優位か、と2-5、5-2の裏表を買う。1000円のつもりが間違って1万円ずつ買ってしまう。実は大穴で万車券となる。金額がえらいことになるので後日友達と取りに行くことにする。おかしなメールがまた来る」
・競輪場の場所
東京ドームの外側にありました。ご存知の通り、現在の東京ドームは「後楽園競輪場」跡地にあります。確か現在のドームにも競輪をできる設備もあるはずです(地下にあるんだか組み立てるんだか忘れましたが)
ここだけ妙にリアリティというか関連性がありました。
・おかしなメール
これは「昔の知り合いに似た人がいたのでメールをしてみる」ということなのですが、私は実際はその方のメールアドレスを知りません。また、一度送ったあとに何度か返信が来るのですが、最初は「いえ競輪場には来ていません」という普通の内容でしたが、その後なぜかそのアドレスからおかしな広告メール的なものが届き始めます。現在の仕様ではありえないものすごいデコメール的な。なぜかダイヤルキーのあたりまで表示が広がるという。気持ち悪い映像でした。
・50ccのレース
もう競輪じゃないですよね。かといってオートレースとも違うんですが。実際そうだったかは覚えていないのですが夢の中では「ノーマルならホンダ(NSR50)だろう。サスが違う」という判断をして、それが当たります。
・車券
これがおかしかったですね。まず、2-5、5-2という買い方は確か今は無かったんじゃないかと思います。で、まあそれはいいとして車券にガムがついてくるんですね。2-5とか包み紙に書いてあるソレが。
で、当たったんですが、夢の途中で「2つのレースを当てた」ことに状況が変わっているのですが、車券に有効期限か書いてある。で、それが24時間以内と12時間以内の2つ。高い配当のほうが12時間でした。
で、なんか旅館みたいなところに帰る(東京ドームからなのに)んですが、そこのおばちゃんが換金できるところを教えてくれるんですね。なぜか郵便局とローソンでOKということでした。
で、金額が金額だというので友達が数人ガードマン的役割で付いてきてくれるんですが、なぜか払い戻しがスムースじゃないと。「これ、本当にあなたが買ったんですか?」とか聞かれる。実際の競馬や競輪ではそんなこと聞かれないですよね。で、結局「本人証明」の決め手になったのが貰ったガム。食べてなかったんですね。それを見せたら「あーご本人ですね」ってなんだそれは、という。
○キャリア表示
「洋服の肩口か胸元に何かの階級章かのようなもので通信インフラのキャリアなどを表示することを義務付けられる。加入電話からISP、携帯、SNSなど。あまりに多いとなんか恥ずかしい」
これなんですけど、前日に「ISPも整理したほうがいいかなあ」などと思ったからかもしれません。現状ISPが3つ(法人ドメイン、CATV、ブログ等用)、SNS系が2つ、携帯まわりが2つ、加入が1つ、IP電話がひとつ(全然使って無い)とかあるんですよね。それの影響かもしれません。義母は携帯を持っていないのでNTTのものを1個だけつけて夢に出てきたのがおかしかったですね。「1個の人」というのを夢の中で意識したということなんでしょう。
変わった形のアパートに住んでいる。
高さは20階建て。4本の丸い塔のような形。外壁の内側には通路がある。ひとつひとつのフロアはけっこう広い。1フロア3世帯から1世帯の構成(上に行くほど1世帯比率が上がる)地上階、10階ぐらい、そして最上階はそれぞれ4本の塔は渡り廊下的なものでつながれている。下のほうの渡り廊下にはスーパーマーケットやレンタルDVD店などがある。上はほとんどが飲食店。
E,W,N,Sと呼ばれるそれぞれの塔の最上階はEは閉鎖されていて、Wがフリースペースのようになっている(一部に小さい飲食店が壁際に並び椅子や机が無造作に並べられている)、N,Sは大型のレストランが入っている。
私はこの塔のEとWをすべて所有していた。知り合いの資産家が持っていたものだったが、亡くなる前になぜか私にくれたのだ。「食うには困らないだけの家賃収入はあるから、あまりがめつく生きないように。なにより借主を守るように」とだけ言われた。なので、他のオーナーと相談をしてWの最上階をフリースペースにした。Eの最上階だけで生活には困らないのだが、なにかに使うかもしれないので、Eの上から3フロアは人には貸していない。
テナント料や家賃で生活にはまったく困らない。その収入で他の物件も買って貸したりしているし、この塔が老朽化してしまっても他で生きていくためのお金は手に入るだろう。
そんなこともあり、また、100世帯近くに貸し出しをしている大家というのは割りと忙しい(不動産屋とのやりとりとか)ので、私は会社勤めをしていない。一応飲食店のコンサル業というものの名刺を持っていたりはするが、年に1度その仕事をするかしないかという程度。なので、表札も出していない。郵便物は管理会社がまとめて持ってきてくれる。Eの17階以上は誰も上がって来れなくなっているので、私がそこに住んでいることを、いや、私が誰であるのかも知っている人はほとんど居ない。
大家としての仕事がひと段落すると、いつも私はWの最上階に行っていた。なにをするわけでもない。壁際の椅子に寄りかかって外を眺めながらビールを飲んだり軽く食事をしたりタバコを吸ったりするだけだ。基本的に誰とも話はしない。
その日も夕方になったので、Wに向かった。E最上階からW、Sへの渡り廊下は6割程度が封鎖されている。飲食店の匂いが入ってくるのを防ぐためだ。逆に言えば残りは全て飲食店。E→Wの渡り廊下、フリースベースの一部にある飲食店の一部は私が直接経営しているものもある。が、家族の名義を使っているので、やはり経営者が私であることを知らないテナントのほうが多い。
フリースペースには近隣の店で買ったもの、あるいは自宅から持ってきたものの持込など、飲食については完全に自由だ。ここで火を使って調理をすることだけが禁止されている。また、飲食店従業員、居住者、オフィスフロアの社員以外はWの20階に入ることができない。IDタグを持っていない「動くモノ」は警備員に連れ出されてしまう。逆に言えば「住んでいる猫」でタグが付いていれば追い出されはしない。昼間は勉強をしている学生なども多いが、食事時や夜はやはり人が多い。
ふとカレーの匂いがすることに気が付いた。見るとも無くそちらを眺めると、私と同世代ぐらいの男性が鍋を前に携帯で話をしている。
「…ああ。例の空き地に居る。カレー食いに来いよ。皿とか持って来いよ」などと。
服装やカレーの鍋を持っていることからして居住者なのだろう。どこかで見たような気がする顔だが、思い出せなかった。それにしても彼らはこの場所を「空き地」と呼んでいるのか。
猫を抱きかかえている小さな女の子が居る。小学生ぐらいだろうか、先ほどからうろうろというかきょろきょろしている。と、もう一人同じように犬を抱えた女の子がやってきた。と、猫の子が
「遅いよ!」
「ごめんごめん! この子がなかなか見つからなくて!」と犬の子。
「しっ! 声が大きいって!」と猫の子。
もしかして、と思う。
・猫や犬が比較的暴れる
・それでも下に絶対に下ろさない
・犬が居なくて遅れた
このすべての条件を満たす理由は、この子たちがタグを持っていないということではないだろうか。現状の警備のシステムでは、抱えた犬や猫とこの子たちを「1人と1匹」とは分離して認識できないはずだ。
一応警備員を呼んでみるか、と思う。私と他の塔の所有者2名が持つタグは特別なもので、警備員を呼び出せる機能および「オーナーのいずれか」であることを向こうが認識できる機能が付いている。
ボタンを押そうか、と思ったとき、先のカレーの男性の友人らしき人物が入ってきた。手に食器と缶ビールを持っているからまあ、間違いないだろう。そして彼もどこかで見たような気がする顔をしていた。
と、犬猫の子たちが、その彼を見てささっとこちら側に逃げるように移動してきた。と、男性がそれに気づき「おい! またお前らか!」とちょっとイラついたような声で言っている。
鍋を持ってきた男性が「いいよ…ほっとけよ」と。
「でもよ。決まりは決まりだぜ? また誰かカモられるんじゃないのか?」
なるほど。子供たちがタグを持っていない、つまりこの塔の住人ではないことはもう間違いないだろう。しかし、どういう理由なのだろうか。
「ちょっといいですか」と食器の男性がやってきた。と、子供たちが私の後ろに隠れるような形になった。
「あなた、ときどきお見かけしますが、こちらにお住まいで?」と男性。
「ええ。まあ」と私。
「ならご存知のようにタグが必要ですよね。この空き地には。で、この子らは外部の人間です。どこかの家のペットを捕まえてきてここに入り、で、お遣いをするから、と金を預かって買い物してつり銭をちょろまかしたり、買ったものから抜いて食う、ということの常習犯なんですよ」と。ああ、そういうことなのか。
「空き地だって。センス無いね」
「広場だよねどっちかっていうと」
まあ、センスはともかく、この場はなんとかしないといかんな、と思う。と鍋の男性もやってきて
「あの。失礼ですがあなた●●じゃないですか?」と。
「あ! そうだどっかで見たと思ったら。俺は××で、こいつは△△だよ!」と。
どこかで見たと思ったが、小学校の同級生だった。
「いえ。違います。私は■■というもので…」
彼らはどうもE,Wの住人ではないようだ。だとしたら貸主の名前は私の本名なので、その段階で気が付いたかもしれない。私は今は仕事用の名前を使っているのでその名を言った。いつのころからだろうか、私は自分の本名を知られることがいやになっていた。私がどこの誰であるのかを含めて。
「…そうですか。よく似ていたもので失礼しました」と鍋の男性。
「で」
「この子たちは私のほうで。警備に知り合いがおりますので」と私。
ああではそれで、という感じで男性たちは自分の席に帰っていった。
子供たちは「警備」という言葉の意味がわかるらしく、おびえている。
「まあ、かけて」と椅子をすすめるとおずおずと腰掛けた。まだ犬猫は放さない。
「手を出して」と言い、不審がりながらも差し出した彼女らの手に小さいシールを貼った。
「もう放していい。このシールはお客さん用だから、見つからないよ」というが信じないようだ。ちょっと危ないが仕方が無い。
「ペットが居なくなったことに気が付いたら、警備会社や警察に連絡が行くかもしれない。飼い主ならどこにいるか調べられるし、普段はそうはしていないが、探そうと思えば、警備会社でも誰がどこに居るかはタグでわかってしまう。つまり、君たちが犬猫を誘拐したことになってしまう」
「でも…このシール本物なの?」と猫の子が小さい声で言った。
「本物だ。この建物の中で3人しかこれは持って居ないし、滅多に使わないものだが大丈夫だ」実はお客さん用ではなく、緊急対応用のシールなのだが。2時間でタグの代わりをする機能が切れる。
「おじさんはその3人なの? どうして持っているの?」と。
「それは」と一息置いて言う。「おじさんがここの持ち主の知り合いで、管理を頼まれているからだ」まあ、この程度ならギリギリいいか。
へーすごいね〜などと言いながらやっと犬猫を下に下ろした。よほどイヤだったのか、両方とも走ってどこかに行ってしまった。いずれ警備会社か飼い主が見つけるだろう。
「君たちはなぜこの塔に、このフロアに入り込んでいるんだい?」と聞いてみた。
と、どうも遊ぶ金欲しさ、というよりは食べるものに困って先の男性が言ったような行為を繰り返していたらしい。
「バベルの塔はお金持ちが住んでいるから、って周りの大人が言ってたから」と。へぇ。バベルと呼ばれているのか。
「バベルには2つの塔を持っている老人が居て、タグの無い人を見つけると八つ裂きにして食べちゃうんだって。おじさん知ってた? っていうかおじさんの知り合いがその老人なの?」と犬の子が。
こりゃ酷いウワサがたってるもんだ、と思いつつ「いや、知り合いじゃないけど。まあ似たような話は少し聞いたな」と乗ってみた。
「私が聞いたのは」と猫の子。
「老人は一度死んで、真っ赤な髪の毛になって幽霊として蘇った。ときどきWのこの部屋に居るんだけど赤い髪の人なんて居ないから誰にも分からないんだって。タグの無い人を見つけると必ず呪い殺す。バベルの亡霊って呼ばれてるんだって」と。かなり近い。前のオーナーもあまりこの塔を私に与えたことはあまり人に言っていなかったから、死んで生き返ったという説があっておかしくはない。まあ、頭は赤くないが。オレンジ色ではあるが。
「へえ」と私。「いろんなウワサがあるんだな」と。
「今日はどういたしましょうか?」と若い女性がやってきた。私が経営している飲食店の店長の娘だ。店長は他の飲食店も統括して管理していることもあり、私の正体を知っている数少ない家族のひとつだ。
「あ。そんな時間か」と私。たまにここで彼女になにがしかの料理を頼んで買ってきてもらって食事をしているのだ。
「いや、腹は減っていないな」と、女の子たちががっかりしているようだ。ああ、何か食べたくて今日は来たんだな、と気が付いた。
「君たちは?」と聞いてみる。
「え、別に…」と。まあ、照れがあるというか、目的を見透かされた感じがするのだろう。
「タンドリーの類をいくつか。あまり辛くしないように。あ、鶏肉は大丈夫か?」と子供たちに聞く。と、先の娘の制服を見て「あ!」と言った。カレー屋なのだが、お遣い詐欺で行ったことがあるのだろう。
「美味しいんだよねここの!」とか言い合っている。そして娘に
「お姉さんはこの塔の持ち主のことを知っている?」と聞きはじめた。
「お会いしたことはありますよ」とくすりと笑って娘は言った。
「怖いの? 老人なの? 髪は赤いの?」と立て続けに聞いている。
と、娘はちらりと子供たちの手の甲を見た。正式な客であれば、オーナーだけが持っているゲストタグを付けているはずだが、シールということは緊急の何かである、ということに気が付いたのだ。
「あまり怖い方ではありません」ほっとしたような子供たち。
「ですが」と娘。
「間違ったことや、同じミスを繰り返すことをお嫌いになる方です。少なくても、そちらのオーナー代行ほどお優しい方ではありません。食事をしたら帰りなさい。今度タグなしで入ったところを見かけたら、警察に連絡しますからね」と優しい顔で怖いことを言って帰って行った。
「オーナーが経営している店の人だ。今日中にオーナーに連絡が入ってしまうな」と私。
「うん」
「もうあそこのチキン食べられないんだね…」と。好きだったのだろうか。少し可愛そうだが、私自身が決まりを破ってしまってはここのルールはもうなんの意味ももたなくなる。
料理が届いたのと、予定が入っていたので「食べたら帰りなさい。もう来てはいけないよ」と告げて立ち上がった。片方の子供が「あ!」と言った。
「バベルの…亡霊だ…」
いつも座るその席は立ち上がると夕日が少しだけ差す時間帯がある。オレンジ色に染めた私の髪の色はその光を浴びて赤く燃えたような色にってしまったのか。
「そんなわけはない」と彼女たちの肩を叩いた。
「ほら、生身の身体があるだろう」
しかし、彼女たちの身体の震えは止まっていなかった。こりゃ髪の色を変えるか、と思って出口に向かうと料理を並べていたカレー屋の娘の静かな声がかすかに聞こえた。
「バベルの亡霊はお優しい方。ただ、間違ったことは許さない。この塔を守っているのよ」と。
微妙に実家を思わせる建物の中に居る。
しかし、ここが自分の実家であるかどうかは分からずにいる。
中に入るが、誰も人が居ない。家具などはほとんど置かれていない。テレビ台はあるがテレビが無い、とかそういう半端な部屋もある。特にホコリっぽいということもなく、急に引っ越したのか、とでも思話せる感じだ。
ある部屋の襖に遺書、という文字が書かれている。はっとして見ると、どうも自分の書く字に似ている。書いた覚えはもちろん無いので、誰かがスキャニングでもして加工したのだろうか、と少し気になる。
「すみません」などの文字も見える。
他の部屋へ行く。と、葬儀の飾り付けがしてあった。これは…と思うと、手をかけていた襖がざざーっと動いてその勢いで部屋の中に引き込まれる。非常に恐怖心を感じる、というかパニック的な状態になるが、その部屋に置かれていた遺書の束がまくれて「コミュニケーション・コンセプト」という文字が見えた。
遺書にコンセプト という文字列。
ああ、夢か。と気が付き、恐怖心は一気に消えた。
その後いろいろなお化け屋敷的仕掛けが続くが「夢だから」「もう起きようか」と思って起きる。
※その手前に見た夢
出張、仕事先、友人が住んでいる街などが映ったムービーを見ている。時々自分も映るのだが、誰かが撮ったというイメージの映像ではない。画質は悪く、おそらく携帯を充電台にでも固定して撮ったものや、自分の身体に固定しながら撮影をしたもののように見える。
場面の多くには雨が降っていて、その中を自転車やバイクに乗って移動している人がたくさん居た。自動車というものが存在しない世界であるかのように、それらはまったく無かった。
違和感として感じたのは、その世界の人々はなにかの「殺意」を感じながら生きていた、ということだ。人々がお互いに持っているのか、それとも「人間ではない何か」なのかはわからない。そして自分を含めて人々はそれを受け入れて生きているように感じた。少なくても怯えてはいない。「そういうものだ」とでも思っているかのようだった。
たまに見る「学生兼ビジネスマン」という夢のパターンでした。ただ、普段は「自分だけがそう」であることのほうが多いのですが、今回は違いました。
○基本的な話の流れ
・Web制作をしている会社。別のフロアでパチンコ店も経営している。輸入雑貨などの物販もしている。従業員は中高一貫教育制の私立学校の2年生から6年生と教員。学園が移転するため皆忙しくしている。
これが話の大まかな流れでした。話としては特にドラマティックな展開はなく「忙しい」ということが中心的に描かれていました。
その中で、いくつか印象的な場面というか「夢ならではのおかしな部分」がありましたので、挙げていきたいと思います。
○「髭」というものについて
基本的には5年生、6年生しか「髭を生やして客前および校外に出てはいけない」という決まりがありました。が「旧華族」出身のみは1年生からでもOK、という階級的特権がありました。また、それらの生徒の髭の中には、なにかの提灯というか照明器具のようなデザインになっているものがあり「ひどい趣味だ」と思いました。
○ショールーム機能
パチンコ店のフロアや後に書きます飲食フロアには、各メーカの発売前の機種が展示されていたりと、かなりパチンコ部門に力が入っていることをうかがわせます。新機種を見に来たお客さんに私が台の説明をする場面もありました。
○変わっている形式のパチンコフロア
一般的なパチンコ店に近い形のフロアもありましたが「1つの機種を1台ずつしか設置していない」フロアがありました。スペースも非常に広く、100円ずつ玉を借りることが出来るものでした。また、パチンコではなく「アームを操作してパズル状のものを組み立てる(または外すなど)ことに成功すると現金が払い戻される」機械などもありました。(実際は違法なんでしょうが)
○徹底して優遇されている6年生
客前に出られるのは5年生以上だったように思いますが、6年生は給与、居住場所他すべてにおいて優遇されていました。食堂に近い場所に居住区がある、など「これでもか」というほど下級生と待遇が違いました。
※おかしな話ですが、昔の大型百貨店にあったような「飲食、娯楽フロア」みたいなところに居住区がばーっと密集している、という構造の建物になっていました。5,6年生のみの居住区と、飲食他の店があります。陸上競技場のフィールドの部分が居住区、トラックの部分に飲食等の施設、という感じです。莫大な敷地面積を必要とする構造で、非常に非現実的ですね。
○実際には無いWeb技術
夢の中で「制作チームが管理チーム(いわゆるプロデューサやディレクターですね)に連絡をしないままサイトを更新(新機能、新ファイルの実装)した」という場面が出てきました。そのサイトはEC機能があり、ユーザのPCに数多くのローカルファイルをダウンロードしていることで非常に動作が軽快、という構造になっている、という設定でした。で、そのファイルを「全部更新しないとマズイ」という話になり「トップページの手前1つ迂回させて一気に更新する」という手段をとろうと、もしかしたらすでに実装されているかもしれないからとブラウザのアドレスバーに
「E:\rif/」という文字列を入力して叩いてみました。一瞬だけなにかの画像が表示されてトップに移りましたが「ダメだ他の会社が使っている」と他のスタッフが言いましたので、なにかのASPなのかAPIということだったのでしょうか。しかし、いずれにしてもそんな技術は存在しないと思います。打った文字列もローカルのディレクトリのように見えますし。
○だらだらした女性スタッフ
上記の「追加更新」を勝手にしてしまった、という女性2名が出てきました。非常にだらだらしていて「やってありますよ〜 大丈夫ですよ〜」とやる気なさげに言っているので心配になりファイルを見ましたところ、オーダー以上の素晴らしいファイルで驚いた、という場面がありました。
swfで作っているのだと思いますが、1枚の「商品陳列棚」写真に見える画像の各商品をクリックすると一瞬でスペックやらカラバリやら購入バスケットが表示される。別の棚、商品を見ようとした場合もまったくタイムラグなく切り替わる、というものでした。これも相当の高速回線、マシンパワーがあったとしても実現できるかどうか、というインタフェースでした。
○アイスクリームショップと意外な近道
夢の終盤に「教師に連れられて旧校舎で会議」という場面が出てきました。1階に下りて、一般道を通って歩いて向かいました。約15分ほど歩いたと思います。夕方に出たのですが、かなり早く暗くなり、雨も降ってきました。警官が検問をしていました。
会議が終わり、旧校舎の最上階、6年専用居住区の中にあるアイスクリームショップというかソーダファウンテンとでもいうんでしょうか。そういう店で休憩して帰る、という場面になりました。と、同級生であるスタッフが何かに気がついたそぶりをしています。教師が「帰ろう」と言うので着いていこうとすると「もう少し雑談してから帰りますのでお先にどうぞ」とその生徒が言います。結局教師のみが先に出ました。「なにかあったか?」と生徒に尋ねると「そこ見てみろよ」と言います。言われたのは厨房兼倉庫の外側のドア。ガラスがはまっているのですが、その外を見ると新校舎のやはり6年専用居住フロアの同じような店と短い連絡通路みたいなものでつながっているのがわかりました。新旧の校舎は逆向きに別の土地に建てられているという設定でしたが、なぜかそこだけ連結されていました。
「生徒だけが知っていたほうがなにかといいんじゃないか」と同級生の生徒が言いました。まあ、そういうこともあるかもな、と反論はしませんでした。
○某競技のトッププレイヤーの家に行くという夢。
○途中が紛争エリアになっていて、レーダーのみを頼りに船で移動。途中、支援航空機に迎撃指令を出す役目を振られて焦る。
○巨大なショッピングモールの中の1フロアの1/5ぐらいがその人の家。黒人男性のガードマンがたくさんいる。
○なんでこんなにお金あるんだろう、と思っていると「応接室(どうみてもレストラン)」に行く途中にその方から話しかけられる。目の前にB&Oの直営店みたいのがあるのだが、そこで買ったテレビとかスピーカーをアクリルで固めた(もちろん音は出る)加工の話をされる。「みんなには内緒だけど、700万円かかったんだ」とのこと。「うわそれボラれすぎ。いくらアクリルのそれらが高いと言っても・・・」と思うのだが、うれしそうなので言わずに置く。
そんな夢でした。700万という数字を夢の中で自分自身「それは無ぇ」と思ったのか、一度起きた後同じ場面をまた見たときには「500万」になっていました。でも高いかな。
※いつもと少し書き方が違います。
昨夜は早めに休みました。0時ぐらいかな?
で。ひとつ夢を見ました。ひとまずざっと書いてみます。
○最初の夢
詐欺師をしている。相棒は同世代の男性。彼の専門は結婚詐欺他女性を色恋にハメて金を巻き上げる詐欺。私は架空の企業買収などビジネス系の詐欺が得意だ。「プロ意識」を忘れないことが大事、ということで共感した私と彼は、○○業(忘れました)の会社を持っていて、詐欺の上がりも一度そこの会社の裏帳簿に入れる。そこから給料を貰っている形になっているのだ。
今回は珍しく、2人で同じターゲットに詐欺をしかけている。ターゲットは病院。この街で一番大きい病院だ。元々ホテルだった建物と工場だった建物、安アパートだった建物を渡り廊下などでつなげてひとつの病院として使っている。工場やアパートはまだ本来の機能を一部残している。つまり働いてモノを生産したり、住んでいたりする人も居るのだ。「強硬な地上げをしたくない」「地域とともに」というのが理由。しかしそれは表向きであり、裏では増改築やらなにやらのコストを口実に巨額の脱税をしている。それをうまくひっかけていただこうというのが今回の狙いだ。
街ではここの観光収入の目玉である「ゲイ・パレード」の真っ最中。今年はもうひとつの目玉である「イージーライダーっぽい人たちのハーレー祭り」も同じ時期に開催されている。どっちかがズレたらしい。ちなみに「イージー〜」にもちゃんとしたイベント名があるのだが、私も相棒もどうしても覚えられないのでそう呼んでいる。
ハードゲイの人々と一部ファッションが被っているのか、お互いに「仲間と思ったら違った」ことが原因でかなり激しい喧嘩が繰り広げられている。その他ゲイは諸々の病気やハードすぎるプレイでの怪我、ライダーは飲みすぎ、喧嘩、無茶なライディングで転倒などとにかく病気怪我だらけで病院はいつにもまして大混雑している。我々としては都合がいい。
今回我々は嘘イベントを開催していた。「スケボー兄弟TAKA&YAE」というダサダサのネーミングのスケボーインストラクターがゲイ・パレードとバイカーイベントを盛り上げますよ、というふれこみで街のあちこちでスケボーに乗りまくる、というもの。このために1ヶ月二人とも特訓したが、なにせ付け焼刃であり、相棒は肩、私は肘を骨折した。が、これも計画通り。病院に通院するための口実だ。マジで折れているので相当痛いが。
二人一緒に治療ということで病院に入る。相変わらずぐちゃぐちゃに混んでいるし、行き先の指示も複雑だ。「外科受付から工場棟のレントゲン科に行って、その後アパートの共同浴場の横にあるベンチで呼ばれるまで待っててください。分からなくなったら“風呂横ベンチ”と尋ねてください」とのこと。はいはいと返事をして進む。
医局の前を通過するときに、相棒が「痛ぇ! 痛ぇんだよなんとかしてくれよ!」と暴れ始める。もちろん芝居だ。医局の人間がわらわらと出てきた。「あのー、ベンチ横って…」と尋ねるが「ちょっと待ってて!」と皆相棒を取り押さえに行ってしまう。というか行ってくれた。で、前から目星をつけていたファイルを、あらかじめ用意していたそっくりのソレと入れ替える。「臨時医師連絡帳」とラベルが貼られているこれが裏帳簿だ。
相棒は「私なんか今しました?」ととぼけている。「精神科にも行って見ますか?」などと言われている。女性の医局員に旨く同情を買ってその場は切り抜けるだろう。先に工場に向かう。
この工場ではスケボーも生産している。ハンドル付き、エンジン付きなどの変わったものも作っている。だからこそ「スケボー兄弟」でやってきたわけだ。ちょっとアル中気味の爺さんに酒や小遣いをやって仲良くなっていた。
「爺ちゃんアレ作ってくれた?」と声をかける。「できてるよ〜」と返事をしながら爺さんがやってきた。用意していた酒を渡して「テストしたらまた来るね」といい4台のボードを受け取る。ハンドル付きの大型のスケボーとエンジン付きが各2台。ここからの逃走に使うのだ。工場を出てからは延々と下り坂が続く。ハンドル付きのデカイスケボーで行けば時速60km/hは楽に稼げる。渋滞しがちな道路だが、横にサイクリングロードがある。ここを行けば車では追いつかれない。その先に巨大なダムがあり、エスカレータでダムを越えられるようになっている。車は迂回せざるを得ない。その先の直線路をエンジン付きスケボーで突っ走れば隣の国までノンストップの超特急の駅がある。隣の国に借りてあるアパートでじっくりと帳簿を拝見してゆすりの手口を考えるという段取りだ。
「いや明日飲みに行く約束しちゃったよ〜ん。プリペイド携帯10個買ってきて良かった。つかゲイに1つ番号渡したのは痛かったけどまあ情報収集のためだからね〜」とか軽口を叩きながら相棒が到着。スケボー技術は相棒が上なので、ファイルを渡し、先に出てもらうことにする。「駅で切符買って、改札の横のカフェでコーラ飲んで待ってるから」と。「酒飲めよ」と笑って言うと「お前が無事着いてからのほうが旨いだろ」と。男にも一々臭い台詞を言うのは職業病だろうか。
相棒が出発した。携帯をつなぎっぱなしにしてヘッドセットで道路状況などを実況してくれる。さて出かけるか、と思っていると爺さんがやってきた。「赤い方はの。電池式になってしまったのじゃ」と。何? 電池式? あれほど軽油エンジンにしろっつったろこの爺! と思って残っているスケボーを見ると赤い。相棒は万が一のガス欠のために軽油を持っている。俺もだが。不幸中の幸いか、と思い電池ボックスを点検する。なんということだ。もはや一部の特殊用途でしか使われないE-4型電池が含まれている。「E-4を直列にせんと馬力が足りんでの。軽油エンジンよりパワーがあるぞえ。ふひょひょ」とか言っている。頼んでないことをやって性能アップ。爺さんの職人魂を甘く見ていた。
「軽油でよかったのに」と言うと「こちらのほうが速いで。両方電池式にはできんかったのじゃ。モーターを手巻きしたからの」と。なんぼほど職人だと思っていると「ダムの上に売店があるじゃろ? あそこは工事の人間が買うんで電池はどれでもあるぞ。ほれ。このリストで1パック分じゃ。2つ分買えばまあ間違いなかろうて」と紙を渡される。ヤバイ。達筆すぎて読めない。一個ずつ確認をしてメモを書き込む。
「気をつけれ。お前さんらなんか分けありの匂いがするが、良くしてくれた。ワシはあんたらの味方じゃよ」と。微妙にバレていたらしいが、もう逃げてしまえばこっちのものだし、爺さんも病院にはいい感情を持っていないようだから安心だろう。
ゲイ・パレードを横目に見ながらサイクリングロードに入る。タイヤは8輪のワイド、サスペンション付き。これは注文通り。爺さんのアレンジで小さい椅子兼、足を置くパッド、フットペダルもついているしハンドルも手前に倒せるようになっている。これは安定している。座ると空気抵抗が落ちるせいか、想定速度より出ている気がするが問題ない。計算より3分以上も速くダムについた。
電池を買わねば、と思いつつエスカレータを上る。と
「うひゃ俺ドンペリ頼んじゃった。金持ってないから早く来て〜ん」とイヤホンから相棒の声。考えなしの行動のようにも思えるが、これがヤツなりの激励だということは分かっている。俺がしくじれば無銭飲食で逮捕されてパーよ、ということだ。しかも、金を持っていないなんてことは無い。山ほど上着の中に縫いこんであるのだから。
売店についてメモを出そうとすると「あら! 引っ越し終わったんだ!」と甲高い女性の声。うわ、下見のときに病院の情報を聞き出すべくナンパした女だ。そういやダムで働いているとか言ってた。相棒が別件で身動きが取れなかったので、俺がやむなく色恋関係を今回担当したのだった。
「ちょっと珍しい電池買うのね。技術者だったの? 違う? あスケボーだ! そういう趣味あったんだ〜 いいじゃ〜ん」一人で喋っている。そして電池を入れてくれようとするが、爪が長いので時間がかかっている。これはマズイ、と思っていると「そうよ携帯のメアド変えたでしょ? 通じないって。ひどくない? 引っ越してきたら付き合うって言ったじゃん。どういうことなの!」とキレ出した。おい俺様はお客様ですよ今は、と思うがそういうトークではさらに逆上、と思っていると
「いや、あの後元カノがしつこくメールしてきてさ。ちょっと変えたのよ。ごめんね〜」 相棒だ。さすがそっち方面のプロ。
相棒の言ったとおりに返す。と「えーじゃ新しいのすぐ教えてくれればいいのに〜なんでなんで〜」と来た。
「いや、新しいのもさ、俺の趣味とかをもじったものにしたら推測で当てられちゃって。で、何度か変えたのね。でバレないのに安定したら、と思ってさぁ」こいつは悪魔か。
「え。じゃ今の教えて〜 携帯見せて〜」
やばい。マジ携帯しか持って居ない。これは詐欺師仲間の「仕事を斡旋しあう」アドレスのものなので、これは変えられないしなんかの間違いで足が着くとマズイ。
「前に解約した携帯をよく入れてたかばんのポケット。左の赤いのがプリペイド、右の青いのが飛ばしのほう。ここでプリペイドマジオヌヌメ」こいつだけにはかなわねえ、と思いつつかばんを探る。入っている。左のを取ってみたら赤い。こっちにしよう。
「あれ? なんでプリペイドなの? 怪しくない?」
「いや、お前専用にと思って買っておいたのさ」と反射的に答える。
「ちょーうれしいんですけど!? じゃアドレス見るね〜。あ、あったあった」
「大きくなったな坊主。父ちゃんうれしいよ」と相棒。そりゃお前と随分長いから影響されてんだろう、と思うが返事ができないので黙っている。
電池は無事入り、女の機嫌も直ったので携帯を受け取り連絡するからね〜 とか言いながら逃走を再開。爺さんが自慢しただけのことはあり、滅茶苦茶速い。売店でのごたごたを十二分に取り返すタイムで駅に着いた。
「…で俺らはね。フリーのコンサルタントであちこちを旅しながら稼いでるの。俺は営業、相棒は計算とか株とかが得意でね…」
ここでナンパしてなんになる、と思うが、まあヤツの言う「常に練習を欠かさない」の精神なんだろう。単に病気かもしれんが。
「んじゃドンペリ抜いて。3人で乾杯しようか」着いて居るのを見て、店内に入ってくるタイミングを計算していたらしい。たいしたもんだ。
「さっきのプリ携帯貸して。アドレス変えておくから」と相棒。抜け目がない、と思っていると「はい送信!」と。
「送信?」
「4日後にはまた来るじゃん? ホレ、コンサルで」とウインクして見せた。確かに4日後には前乗りして入り、院長が確実に居るだろう5日後に「コンサル」だが。
またも携帯をいじりながら「でさあ。お前疲れてるでしょ最近。働きすぎよ。ありがたいけど。で、たまには女と遊んでおこうよ。飯誘っておいたから。で、今○○ホテルの一番いい部屋取ったから。がっさりやってこい。売店の女だろ? 行っとけ行っとけ」携帯でホテルの予約をしていたらしい。
「お、返事来た。“私そんな軽い女じゃないけどOKしちゃうはぁと”と。バカ言ってんじゃねえよ軽軽じゃねえかよヘリウムかよ。なあ!? まあいいややっとけ。だっしゃっしゃ!」
「まあそれは後で考えるけど切符は?」
「買ったよバカ野朗! なんだお前“前が膨らんで切符も買えません”かこの野朗エロ! エロ台風! よっ精力が強いまま北上中!」
こいつの唯一の欠点は異常なまでの酒の弱さだ。まあ、電車に乗ったらすぐ寝落ちするだろうから楽でいいが。
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という詐欺師の夢を見ました。で、起きました。映像的に工場の場面の印象が強かった、などと思いつつまた寝ました。
○2つめの夢
さっきの工場にまた居ました。登場人物他設定はまったく異なります。工場は「工場として存在」するだけで、主な場面は隣接する事務室でした。
そこで私は「社員食堂のコンサルティング」をしていました。先の夢でいう「コンサル=詐欺行為の隠語」ではなく普通のコンサルティングです。そこで「社員への感謝を込めて、強烈に豪華な食事を無料で出したい。でも社として用意できる予算はそう潤沢ではない。なにかいいやり方が無いか」という社長の相談を受けていました。
私は「まだ裏づけが無い話で申し訳ないが」という前置きをして「この時期、大手のホテルのバイキングはクリスマスメニューになっているところもある。が、いかんせんローストビーフなどはロスが出る。そこのロスで出たものを安く仕入れて、ということなら可能かもしれない。廃棄品利用ということでプライド的に納得できないなら無理ですが」というような提案をしました。
社長は「それで衛生的に問題が無ければプライドなんて全然問題ない」ということでしたので、今度はやはりコンサルをしている大手ホテルが「バイキングの他のホテルとの差別化」を言っていたので、そこに行き「1時間ごとに焼きたてのローストビーフ」「他のメニューも30分または適宜に交換。つねに作りたてのおいしいバイキング」を提案。廃棄品は先の社員食堂に「協賛としてホテル名を出し、エステパックなどもプレゼントとして提供して御社のイメージアップに」などとあの手この手で交渉に成功。工場は清掃器具や清掃サービスを業務として持っているので、正月前に無料で厨房の清掃を、というバックを提案などうまく話をまとめました。工場の社長も「清掃はOKです! 自分が行きます!」とノリノリ。
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なにもかもうまくいった、というところでまた目が覚めました。
「廃棄品の利用って、保健所とか文句言わないのかな」と妙にディテールが気になりつつ、また寝ました。
○3つめの夢
保健所に居ました。何をしにいった夢なのかはわかりません。とにかく保健所で何かの話をして外に出ました。
と、そこにはまた工場がありました。いままでと同じ工場です。スケボーを作ってくれたおじいさんが居ました。
「おや。うまく逃げられなかったのかい?」と聞いてきます。なんだったろうか、と夢の中の私は考えます。「逃げる」とはなんだろう、と。
病院の中をふらふらと歩きます。「まだ骨はくっついていませんよ! ちゃんと通ってください!」と女性の看護士に言われます。が、なんのことかわかりません。
なにかの販売員のような女性が来ました。爪が長く、スタイルのいい女性です。「また携帯通じないじゃん! バカにしてんの!?」なにか怒っています。でも、この人が誰なのか分かりません。
遠くのほうで、なにやらイケメンが周囲に明るく話しかけています。普通の光景、と思いましたが、違和感がありました。その男性の隣に私が居ます。じゃあ私は誰なんだろう、と思いました。
工場を出ると、スケボーを持って歩いている男性が居ます。私でした。
これはちょっとおかしい、と思いつつ、ふらふらと工場の隣の事務室に入りました。作業服のようなものを着た年配の男性と、スーツ姿の私が商談をしています。本当に自分は誰なんだろう、と思っていると、商談を終えたらしいスーツ姿の私がこちらに歩いてきました。
「多重ログインですね」とスーツ姿の私。
「おそらく、いや間違いなく今あなたは夢を見ている」と続けてその私。
「多重ログイン、つまり夢の中に複数の自分が存在することを普段はできないようにしている。そうでしょう?」とイケメンと一緒に居た私が部屋には言ってきながら言いました。
「仕事でも多重ログイン対策はしているのにね」とスーツ姿の私が笑いながら言いました。
「久しぶりに酒飲んだせいだと思うよ」とスケボーに跨りながら足で床を蹴りころころと進みながらもう一人の私が入ってきました。
「起きたらベッドで寝ているのが本物。そしてそれは君だ」とスーツ姿の私が肩に手を置いて言いました。
「だが」とスケボーの私、その言葉を引き取ってイケメンと居た私が
「起きたと思った時、ベッドに居なかったら、アンタは本物じゃない」
「っていうか、死んでますよそうだったら」とスーツ姿の私がメガネを拭きながら言いました。「たぶんそんなことはないと思います。いや、思いたいですね」と続けました。
「さて。ログアウトだ」とスケボーから立ち上がりながらその私。
「どうすれば?」と私。
「夢だと思って、さて起きるか、と思いなさい」とスーツ姿の私。続けて
「全員消えてから、起きようと思って」と。
そして目の前の私たちは1人ずつ消えていきました。「まあ、大丈夫だろう」と思いながら「起きよう」と思いました。
起きたら無事にベッドの中に居ました。
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面白いパターンの夢の見方だと思います。もしかすると最初から最後まで、主要の登場人物は「どこかしらに自分自身の要素を持っている」人間として出てきていたのかもしれません。
こんにちは。
タイトルのようなことがよくあります。夢の中で面倒なことに見舞われるのですが、一回起きてまた寝たり、あるいは寝ているままでも「あ、これ夢だよ」と気がついたりして「やんなくていいよ」と思うわけですね。
いろんなことがあるのですが、多いものだとまず「仕事」です。この場合は実際の自分の仕事に関するものばかりとは限りません。むしろ飲食関係の仕事をしていて「あ、夢だ」と思うことが多いです。
あとは「受験勉強 試験」も多いです。仕事がらみではなく、学生としての試験ばかりです。また「試験問題を作る」というのもたまに見ます。これは以前居た会社で入社試験問題の一部を制作を担当していたのですが、それがもの凄くいやだったからかもしれません。>守秘モノなんでしょうから詳細は書きませんが、問題数が割りと多かったのと、難易度の調整に時間がかかりました。
ちょっと毛色が変わったものですと、刺されたり撃たれたりというのを「夢でもイヤだからこの場面無し」とか省いてしまうことがあります。または一度起きてまた同じ場面を見て「これ無し」とか。
今朝方も見ましたが「変な機械の使い方に悩んで面倒になって“夢だからやめた”“こうでいいじゃん”」と思うパターンもあります。今朝はかなり大きめのスマートフォン(東芝製)を営業マン(西田敏行)が持ってきて云々、というものでした。
厚さ4〜5cm、幅10cm、高さが40cmはあろうかという巨大なもので、しかしその大きさに特に理由やメリットが見つからない、というものでした。
「弁当箱みたいですねえ」などと軽口を叩いていると、周りにいたある人物が「とんかつを入れたいぐらい」と言いまして、まあ現実にはそういうことを言う人間ではないので、それをきっかけに「これは夢かもな」と気がつきました。で、西田営業マンが「LANにつなげますとですね、この性能が特にですね」などといい始めたのでLANケーブルを自室に取りに行くのですが、ケーブルがすぐに見つからない。また、ハブが実際使っているものと違うものでした。これでまた「あー間違いなく夢だ」と思いつつ作業をするのですが、ハブが全部埋まっていたのでその手前のルータを見たところ空いている口に「IN」と書いてあるんですね。で、つなぎ換えるのが面倒なので「これOUTでいいじゃん」と思ってもう一度見ましたら「OUT」に変わっておりました。で、つないで見ますと、まず設定画面で「YRB」というものを設定しなくてはいけない、と。なんだそれ、と思っておりますと、仕事関係の方から電話がありまして。用事が済んだのでちょっと「YRBって知ってますか?」と聞いたところ「SONYと東芝の独自規格で、RGBの代わりというか実はYRBのほうが元祖。Yを基準にするとガンマ設定がしやすい云々」と説明をされました。で、なぜか「そんなことも知らんのか!」と怒られてしまいまして。で、めんどくさいのでそのまま電話を切ってしまいました。夢だと思ってなければさすがにできないことです。
で、そのスマートフォンの描画性能をどうこう、というデモでゲームをやりました。夢でよく見るのですが、まあ「夢内オリジナルゲームを攻略する」というパターンです。その「夢ゲー」にありがちな展開は
・ルールがわからないままスタート
・途中でルールに気がつくが、とんでもない難易度
・夢だから、と思って投げ出す
というものです。今朝は「スライムをクリックして消すのだが、その名前を一度全部覚えてある法則にしたがって消す。一回ミスすると配置が全部変わる」というものでした。あっさり投げ出しました。
ゲームで思い出しましたが、ダーツをしている夢はほとんど見たことがありません。夢なんでもの凄い入りをしてくれればいいのですが、良くも悪くもないというものだったと思います。試合の夢だったと思うのですが「(この展開なら)無理しないでシングルで締めていこうよ」とかまあ普段と同じことを言っていた気がします。
飲食店に行った。何の店かは分からないが、良い店だという評判を聞いたので。
エレベータから降りると、大きな受付カウンターのようなものがあり、左右に大きな部屋があるのが見える。
「そちらでお待ちください」と左側の部屋を指差されたので、向かう。
大きなソファがいくつかある広い部屋。かけてぼんやりしていると、女性が「お待ちの間お飲み物を」と言うのでビールを頼む。
女性はビールを持ってきても帰らず、となりにかけたままだ。
しばらく雑談をする、と、カウンターに呼ばれる。
「すみませんが、今日の分の料理は終わってしまいました」とのこと。
変な話だ、と思うが、無いものはないのだろうと会計をする旨伝える。
「5万円です」と言われる。
「ビール一杯で5万とはおかしい」と言うが
「当店はセット料金で、入った段階で何を飲もうが召し上がろうが5万円。お客様は料理を召し上がらなかった、というだけです。5万は5万です」と。
料理が出ないのはそちらの都合ではないか、と言うが「それはそれ これはこれ です」とのこと。
納得できないが、まあ仕方ないか、と5万を払って帰った。
入院したようだ。という意識。
※自分の容姿や年齢は、現在のものに近かったり、極端に若い(少年)に変わったりしました。また、それぞれの役割の人物は現実とは異なっていました。
病院といっても、ちょっと変わったつくりになっている。渡り廊下で学校やオフィスビルに連結されている。学生はそれぞれ「小・中」「高校・大学」という単位でまとめられていて、違う学校の生徒達が、たとえば「中学の授業」という形で「入院中ではあるが必要な授業は受けた」形を取れるものだ。オフィスはSOHO的な小部屋がたくさんあり、コピー機などは共用する形だ。
廊下を歩いている。自分の病室を探しているのだ。しかし、時々自分の名前を忘れそうになる。というより、はっきり思い出せない。が、部屋の札を見て歩いていると「あ、ここだ」と思えたところがあったので入った。
家族が居た。友人や家内も居た。「どこに行っていたんだ」という視線を感じる。寝ていないといけないのだろうと思い横になる。
家内を除きそこに居た人たちが帰った後、別の友人がやってきた。パジャマ姿の女性を連れている。誰だっけこの人。なんでパジャマなんだろう、と思う。
友人は差しさわりのない話をしていたが、家内が席を外したときに
「あのときの○○さんですよ。彼女もこの病院に入院してるんです。偶然にしても、ですよね」と意味ありげに笑う。
ああそうだ、と思う。この○○さんという女性は彼と交際をしていたのだが「別れてきました」と私の部屋に押しかけてきて、なし崩しのように短期間だが交際したのだった、と思い出す。
「懐かしいわね。昨日のことのようだわ」と少し涙ぐんで女性が言う。昨日のことのよう、と言ったが、彼女の容姿は当時のままだ。15年ぐらい経っているはずだというのに。
ふと鏡を見ると、自分も若くなっている気がした。同時に「ここに居てはいけない」と思い「ちょっと手を洗ってきます」と言い残し、その場を逃げるように去った。
しばらく歩くと、また自分の病室と思われる場所に来た。なにか古い日本家屋のような内装と家具。病院という雰囲気ではない。
ベッドが二つあり、片方にやはり家内が寝ていた。点滴をしている。なにか同じものを食べて食あたりでもしたのだろうか、と思う。いつのまにか私も点滴を持っていた。
ベッドに横になり、和箪笥のような家具のほうをふと見て初めて気がついたが、その上に布団を敷いてもう一人女性が寝ていた。150cmに届かないだろうほど背が低いが、子供ではないようだ。
家内が治療を受けるため他の部屋に移動した。医師が来るのではなくこちらから行く仕組みのようだ。しばらくして私も呼ばれたので出ようとすると、寝ていた女性が箪笥から降りて近づいてきた。熱があるのか顔が赤い。見たことがあるようなないような顔だ。
「ねえ。今月厳しいんだ。お小遣いちょうだいよ。ただで、とは言わないからさ」
何を言っているのだろうかこの人は。というより誰なんだあんた一体、と思いつつ、少しは渡してやろうかと思うが、財布も見当たらないし面倒なのでそのまま出た。
このあとも、同じようにいろいろな内装、いろいろな女性がいる病室に入っては出る、ということを繰り返した。みなどこかで見たような、何かの関係があったような気がする人たちだった。私の姿や年齢は、その部屋に出入りするたびに異なるものになっていた。私の様々な世代を象徴するような病室と女性達。
だが、決定的なことは何一つ思い出せない。これは本当に自分の生きている現世なのだろうか、という気すらする。
最後に、ひとつのドアがあった。やわらかい感じの照明が少し漏れていて、何か宴会でもしているかのような華やいだ感じの笑い声などがする。子供も何人か居るようだ。犬や猫も居るようだ。とても暖かい気配がする。
「あなたも入られては。ここに居てもいいんですよ」どこからともなく若い男性の声がした。
ドアノブに手をかけた。が、自分はここにいていい人間ではない、という気持ちがして、右側の通路に向かって歩き出した。この先はどんどん薄暗くなって居るようだ。
世に言う「朝市」っぽいところを歩いていた。売っている人が口々に「チョイスー、チョイスー」と道行く人に声をかけている。
「チョイス=選んでください」という意味の掛け声なのかな、と思うが、特に欲しいものがなく、そもそも出張打ち合わせで来ているので、道を急ぐ。
打ち合わせが終わり、ちょっとした雑談タイムになる。「市場は通られましたか?」と聞かれたので「ええ。なんか変わった掛け声みたいのが気になりました」というと、なにかハッとしたような顔をされる。
「あ、あれはですね。まあ、言ってみればこの地方の方言でして」
「はあ。英語みたいで変わってますね」
「いえ、英語は関係ないんですよ」
と、ここで急に小声になって
「“いらっしゃいませ”という意味の方言です」と言う。
「へー。“いらっしゃいませ”が“チョイスー”なんですか」と何気なく言うと
「ちょ!、ちょっとこちらへ。早く!」と凄い勢いで給湯室のようなところにつれていかれ、塩水と思われるものを飲まされる。
「あのですね」と社員の方。
「この街以外の人間が、この街で“チョイスー”と言ってはいけません。絶対にです。また、直接ものを人に売る、特にこの街以外の人間に売る可能性が高い職業の人間は“いらっしゃいませ”と言ってはいけないんです。私は直接手に取れるモノを売る仕事ではないので、ぎりぎりOKですが、結構危ないんですこれでも」とのこと。
意味がよくわからないが、塩水はなにかの御祓い的なものだろうか。とにかく「いやそれは知らないこととはいえ…」などと謝り失礼することに。
帰り道でも同じように「チョイスー、チョイスー」と言っているが、なんか不気味なのですぐ新幹線に乗って帰ることにする。
とても長いです。
ある事実を再現するドラマの脚本と監督を依頼された。
専門外の分野なので「なぜ私に?」とプロデューサに尋ねる。理由としては
・守秘の徹底に定評が有る
・これから話す「ドラマ化にあたって“ここは事実と違う表現にして事実を伏せて欲しい”」部分を守り通すには、他の分野の方を入れたほうがより安心と思われる。
というような理由とのこと。事実と異なる部分とは事件の中で
・関わった大物政治家の実名
・殺人事件
・地名
・心霊現象としか説明がつかない部分
これらを「若干匂わせる」「まったく無かったことにする」などのさじ加減をプロデューサと私だけが知ることとしたい、とのことだった。特に政治家と心霊現象は事件にかかわった人々の間でも絶対のタブーだという。
ドラマにリアリティを出すためにそのすべてをお伝えする、と言われた。なるほど、これでは公表できないのも無理は無い。
「しかし」と私。
「すべてを伏せておくほうがよろしいのでは?」と尋ねる。
「数字が取れる装置が、この事件の中にはたくさんある、と私は判断しました」とプロデューサ。
「また、後にお分かりになるかもしれませんが、この事件の“手法”を用いた事件は、世界中で実は何度も起きている。人々がまたこのような事件に遭遇したときに“こう振舞えば助かる”という潜在的知識を植えつけるためにも、誰かがやらなくてはいけないことなのです」と。
“手法を用いた”、“またこのような事件に”
という部分がひっかかったが「心配は要らない」ということだったので、引き受けた。
ドラマは初回を75分枠拡大SPという形で放映。ほぼ撮影が終わってから放映を開始したこともあり、クオリティを保つことができたせいか、また「本放送中に再放送を各話2回も行う」というフォロワーにもついてこれる仕組み、ネットでのBuzz対策などもうまくいったと思われ、レイティングは非常によかった。最終回の90分SPも瞬間的では有るが35%を超えた。
数ヶ月は何事もなかった。ドラマの仕事がまた来たりしたが、死ななかったのが不思議なくらい忙しかったので、受けなかった。
携帯が鳴った。ある地方都市で温泉ホテルを経営している家族の長男、を名乗る若い男性とのことだった。
友人が録画した例のドラマを見て、今自分の周りで起こっている不思議なことに似ているので、相談に乗ってほしくて失礼ながら(私のことを)調べさせてもらい、ようやく連絡先を入手した。というような話だった。
「私はドラマは専門ではないです。ましてや探偵でもない。局か、探偵か、もちろん警察を含めて、そういう方たちにご相談されるべきではないかと思います」
そのように告げて、電話を切った。
翌日、事務所に一人の青年が訪ねてきた。昨日の電話の主だった。驚くことに、ドラマの主役級を演じたタレントに雰囲気が似ていた。
あれこれと押し問答をしたが、これはてこでも帰らない、という雰囲気を感じ、これではキリがないと「伺うだけですよ」と念を押して一度帰ってもらう。
やれやれ、これは妙なことになってきた、と思う。幸いなのか不幸にして、なのか、急ぎの仕事はない。明日出発、という約束をしたので、支度をして早めに休んだ。
新幹線のホームから、遠くに青年の実家だというホテルが見えた。相当な規模のようだった。在来線もあるが、タクシーだとすぐですから、ということでそうする。
ホテルは非常に大きく、真ん中に露天風呂、プールなどを挟む形で4本もビルが建っている。これは相当な資産家だ、と思う。昨日「前金と言っては少ないかもしれませんが」と500万もの現金を持ってきたのも頷ける。
ホテルの一室に、事件の経緯を知る人たちが待っていた。皆若い。大学生ぐらいだろうか。
話を聞くことにする。青年が話し始める。
「先週のことです。最初に言います。先生が撮られたドラマと同じ事件が起きました。いや、起こり始めている、というほうが正しいです」
先生、というのを辞めて苗字で呼んでくれないか、と告げる。それどころの話ではない、と分かっていながら。いや、分かっているからこそ、それしか言えなかったというべきか。
先のドラマと同じ、というならば、最初に起きたことは「エレベータが自我を持ち、人間と会話する能力を突然持ち始める」ことのはずだ。それを尋ねると
「そうです」とのこと。
「あの、ですね」と私。
「失礼ですが、いたずらと考えるのが妥当ではないかと思いますが、そのへんは…」
「調べました」と青年が遮る。
「まず、エレベータ会社を呼んでメンテナンスをしてもらいました。ハード的にはなにも異常がありませんでした。もちろん、運行用のAIがあるソフトもです。次に、保守や事故用の通話回線を通してなにがしかのクラッキング的行為が出来る仕組みが有るか否か、またはその改ざんがあったかも調べてもらいました。構造上の秘密についてすべてを教えるわけにはいかないと言われましたが、行為としてその会社がこのホテルに対して外部からなにかのイレギュラーな制御は行っていない、という誓約書を書いてくれ、と言ったらあっさり書きました。なにもやましいところはないから書きます、と言われました」
「はい。なるほど。では、次に失礼ですが、内部の方にそのようなことができる可能性は?」と私。
「話はちょっとそれますが」と青年。
「うちのホテルは150年ぐらいの歴史があります。もちろん昔は旅館でした。祖父と父の代に渡って大改修を行い、ホテルの形になったのです。そして、ホテル化にともない、システムエンジニアをしていた父が会社を辞めて実家の経営に関わるようになりました。当時としては異例なほど、いわゆる“PC化”を行ったそうです。僕も子供のころから、PCやネットに関しては英才教育と言っていいだろうものを父から受けてきました。父は数年前に他界しまして、その後を受けてPCまわりの管理をしているのは僕です」と。
「なるほど。それではいたずらを疑う余地は無い、と。失礼ですが、あなたの狂言でなければ、ですが」
「そんな馬鹿げたことをするわけが!」と青年が声を荒げる。
「お兄ちゃん! 言われても当たり前のことだから! 落ち着いて!」と若い女性の声がする。
青年の妹で大学生です、と簡単に自己紹介をした後、妹(A子と表記します)が続ける。
「狂言と思われて当然だと思います。しかし、先生も当然お分かりのはずです。もしドラマと同じだったら、このあとけが人が続出することに」と。
「ええ。まあ」と私。
ドラマではこのあと
・エレベータのドアの開閉が異常になり、けが人が続出する。
・エレベータは「私(わたくし)が出すクイズに答えられたら、このことをやめよう。そして、二つのパスワードを教えてあげよう」と持ちかけてくる。
そういう展開になる。そして、大物政治家が怪我をしてしまい大事になるのだ。
どこまで自分がこの事件に介入するべきか、どこまで責任が取れるかわからない。いや、責任など取れはしないだろう。警察を呼ぶべきだろう。
「あの、ドラマと同じだと、このあとエレベータが」
「ええですから」と青年。
「もしこの後それが起きたらどうするべきかをご相談したくて来て頂いたというわけです」
「この段階で」と私。
「事件性が無いとは言えないと思います。警察にお願いしてはどうでしょうか」
「あの。それも考えたのですが」とA子。続けて青年が
「ある大物の政治家の方と秘書の方数名が昨日から泊まられています。で、ある事情があって、滞在中はホテルのマスコミの取材は禁止で、よほどのことが無い限り警察も呼ばないで欲しいと強くお願いされていまして」と。
最悪だ。
ドラマの中では、大物政治家は人気プロ野球チームのオーナー、という形に置き換えられていて、怪我もしない。エレベータに乗る前に雑用を思い出して助かるのだ。また、秘書の方数名、というが、もしこの事件がドラマの元になった事件と同じことが起きるというならば、秘書の中に大物政治家の愛人が紛れている。実際の事件では、政治家と彼女が怪我をして、警察と本物の秘書のマスコミへのコントロールが効いたため、世の中のほとんどに知られていない事件だった。
このことを大物政治家に告げて帰ってもらうわけにはいかないだろう。信じてもらえるはずもないし、守秘を破ることにもなる。事故が起こるタイミングは、今日あたりのはずだ。事実としての最初の事故は「エレベータが下に半分ずれていて新聞を読みながら乗ろうとした政治家が怪我」だ。事実をひとつずらしてみる、ぐらいしか手の打ちようがない。
「あの、非常に危険なことを申し上げますが」と私。
「なんでしょう」
「責任も取れない話ですし、やるやらないはお任せします。まず、エレベータは止められますか?」と私。
「止められます。が、30分ぐらいするとまた勝手に動き始めます」と青年。
「結構です」と私。
「いますぐ、1本を除いてエレベータを“故障”の名目で止めてください。次に、この中で一番運動神経に自信の有る方は?」
「あの。俺が。棒高跳びで国体出ました」と大柄な青年が言う。
「よく聞いてください。まず、政治家の方がいらっしゃるフロアに売店はありますか?」と私。
「あります」とA子。
「ではそこで、現在ある限りの雑誌、発売日前のものをすべて売り出して、それを手書きポスターなりで告知してください。また、政治家ほか宿泊客が通ったら“お退屈でしょうからいかがでしょう?”と薦めて、とにかく売店に足止めをしてください。で、陸上のあなた。何度も繰り返してそのフロアにエレベータを呼んでください。いずれちょっと暗めの扉があらわれますが、そしたら電灯で下を確認して、天井が見えるようなら飛び降りてください」
「えーと、えーっとそれはいったいどういう狙いが…」と青年。
「簡単に言います。宿泊客を一箇所に足止めして、そのうちに1回目の事故を発生させてエレベータがクイズを出すか様子を見ます。事故がおきたという事実があれば、連続してエレベータを止めることもできるでしょう。クイズが出て、ドラマと似ているなら正解もできるかもしれません」と早口でまくしたてた。
皆が部屋を出て行った。
ふと顔を上げると同級生のB子だけが戻ってきていた。同級生? いや、同級生だ。
「yae君って、こういうときに頼りになるタイプなんだ〜 知らなかった…」となにかうっとりした目で見ている。“恋愛ジャンキー”と周りから陰口を叩かれることも少なくないB子。あまり関わりたくないので「売店に行く」と部屋を出た。
どこで買ったのか、ターミネーターのような安っぽいサングラスをした浴衣姿の男性が「ほぉー。雑誌ってのは随分早く上がってくるもんだなあ」と同行の女性に話しかけている。政治家だ。そして愛人だろう。どうみても政治家の秘書には見えない。銀座とかのドキュメンタリー系の番組で見たような気もする。
エレベータに向かう。ニックネーム「陸上」が何度もボタンを押している。電灯をドアに差し入れた。来た!
陸上の姿が消えて、バスッ、となにかに着地したような音がした。「いててて…」と弱弱しい声がする。大怪我! と思いかけよると陸上が這い上がってきた。さすがの身体能力だ。
「怪我は?」と尋ねると「うん、ちょっとね。足の親指が痛くてね」と靴下を脱いでいる。親指の裏から出血している。
「あ。大丈夫。水ぶくれが出来てたんだよね。スパイク変えてから。それが潰れただけみたい。うん。消毒してくんね。yaeも気をつけろよ」と笑顔で陸上がどこかに向かった。
ほっとしつつ、陸上には悪いがエレベータによる「傷害事件」の事実が発生した。と、
「お若い方。クイズはいかがでしょう?」 電子音声としては異常な滑らかさで声がした。エレベータがクイズを出してきた! ドラマと同じだ。
「これから算数クイズを出します。中に入って階数のボタンを見てください。2問連続して正解したら落としません。パスワードを進呈して、私は普通のエレベータに戻ります。2問連続して不正解なら、最上階からフリーフォ〜ル! ですよ」
よし、ここまでは同じだ。腹を決めていくしかない。と、B子が「私も乗る〜」とやってきた。
「バカお前。失敗したら死ぬかもしれないんだぞ!」と止める。が「危機的な状況で結ばれた男女はぁ、知ってる?」知ってるよバカってかそれSpeedじゃんよ、と思っているとエレベータが
「やらなければ、いますぐ他のエレベータが絶叫マシンになりますがよろしいですね?」と。
やむをえない。乗った。で、B子も乗ってきたので突き飛ばす。「閉めろ!」とエレベータに叫ぶ。尻餅をつき、ミニスカの前を押さえて半笑いで「見えた?」という形に口を動かしたB子の顔が異常な高速で閉じたエレベータのドアの向こうに消えた。
「お一人様で結構なのですね?」とエレベータ。「ああ。始めろ」と答える。
「では最初の問題で〜す」バカにしたような口調でエレベータが始めた。
ボタンが点滅している。1閉14〜と来た。これはドラマで見たぞ!?
「ルート2」「お見事!」
次はルート5のはず。不正解1問なら落とさないかを確認すべきか悩む。が、ここまでドラマと同じなら確認するべきだろと
「ルート3」「残念! ルート5とお答えいただきたかった!」
某有名司会者の物まねをするところまで一緒だ。これは間違いがないだろう。
次は円周率、次が複雑な掛け算などが入るが、答えは「ゼロ」になるはずだ。
結果は無事正解。ドアが開く。「では通常営業に戻ります。パスワードは“ケ”と“テ”ともにカタカナです。ではまたどこかで」
B子が駆け寄ってきた。「さて、私のパンツは何色だったでしょうか?」
とりあえず無視する。そしていよいよやっかいなことになってきた。「ではまたどこかで」と言いやがった。もう完全に過去の事件と同じ展開だ。いや待て。なんで俺がそんなことを知っている? まあいい。いまは事件のことを考えよう。
いや、待った。事件? 俺はドラマを見て、それでアイツに相談されて…。
なんということだ。この数分、急にあたまがもやもやすると思ったが、別の人格を演じていた? いや、のっとられていたのか?
間違いない。いつのまにか人格を誰かにのっとられて、この事件の関係者に入れ替わってしまっている。パニックで焦っているというレベルではない。エレベータから出て少しまで、私は青年たちの同級生だと思い込んでいた。B子についても「また恋愛ジャンキー?」と思ったが、それはドラマでは放映されていないエピソードだが、私の感情は「同級生B子」に対するものでもあったように思える…。
少し整理が必要だ。確かなことは私はこの事件の世界に飲み込まれつつある。人格をのっとられていたということを含め、もうただの傍観者では居られないのだろう。
この後も事件の再現が続くなら、次はおそらくホテルの別のビルに同じ現象が起きる。そこをクリアできても、3つめのエレベータが暴走した後、ゴミの取り出し口がのっとられ、そこでおそらくは陸上が胴体を切断されて死んでしまう。そして、現在の感じだと私がB子に色恋沙汰で殺されることになる。
ドラマではアレンジとカットをされている場面だ。ゴミの取り出し口に挟まれた段階でクイズが出て正解して助かることになっているが、実際はクイズは出ず、そのまま切断されてしまう。
また、過去の事件から考えるとドラマで全面カットされた「切り刻まれてばらばらになった惨殺体」のエピソードは、現在の状況からすると「B子私に交際を強要してナイフで脅す。その場は取り繕って逃げられるが、A子と私がいい感じになってしまい、狂乱したB子に私が殺される」ことが事件をなぞれば想像できる。
「先生ちょっと待ってくださいよ。無視なんてひどいぃ!」
B子が私を「先生」と呼んだ。(結局皆に先生と呼ばれていたままだった)
なるほど、私がのっとられているときは周りにも学生に見えていると。いや、これはこの事件に関わっている人間が全員「のっとられて」いると考えたほうが妥当かもしれない。さっき陸上君も確か私を「yae」と呼んだ。これは彼らの精神状態の目安になる。また、自分の人格を取り戻すキーワードとして精神にインプットしよう。「yaeと呼ばれたら、私ものっとられている」と。
「私ぃ結構歳上のほうがタイプなんです。先生はどうですかぁ?」ここはいなして時間稼ぎだ。
「いや、歳はあんまり気にしない。普段から派手な下着をはいている子は嫌いじゃないね。光沢のあるイエロー系とか」と軽口を叩いておく。
「やっぱ見えたんだ! 先生結構エロぃぃぃ!」やはり現在のB子に殺されるフラグは私に立っているようだ。
さて、B子のことは後でなんとかするしかないが、ここまでおきた事で最大の問題「人格をのっとられた」件。頭に浮かぶのはドラマのネタとなった事件の中の最大のタブーである「霊能力者」の存在だ。
プロデューサが「まあ、このご時世に、というお話なんですがね…」と語ってくれた「これらの一連の事件に共通しているのはエレベータを中心とした昇降機械と、霊能力者の介在なんです」と。
「霊能力者が犯人なんですか?」と私。
「だろう、と言われています」とプロデューサ。
「霊能力者と名乗る人物が逮捕されたことも何度かありますが、現場に居た人間が急に自首してそうだと言ったり、あるいはそれまでは完全犯罪を進めていたのに突然ボロが出たり、という感じだそうです。また、共通してるのは逮捕された後、トリックを覚えていない、と供述することなんですな」
プロデューサの話を要約すると
・逮捕された後、霊能力らしきものを発揮した人物は皆無。
・トリックを覚えていないが、自分がやったと主張する。あるいは、念じただけでエレベータが動いた、としか言わず要領を得ない。
「また、ここからはさらにおかしな話なんですが」とプロデューサ。
「これらの事件が起きたしばらく後に共通しているのは、強烈な力を持った霊能力者が必ず現れて、まあ、裏の世界やらを中心に暗躍したという記録があるんです」と。
お茶を一口含んで、話は続けられた。
「まあ、我々のような商売の人間にはにわかに信じられない話なんですが、そのエレベータ事件によって得た死者は、いわゆる“生贄”だというんですな。その引き換えとして強烈な霊能力を手に入れる、と。超能力と言ってもいいような。あ、エレベータが使われたのはですね、昔のエレベータって仕組みが単純で、霊能力者にとっては扱いやすく、また、殺傷能力もあり、さらには霊界へのアンテナとなりやすいんだそうです。ワイヤーとか諸々の部品が」
そのときは「へえ」という感じで終わった話だった。また、それがオチではねえ、という話になり、結局ドラマでは「エレベータ会社が出したエイプリルフールのジョークWebページで“我が社の本社エレベータをクラックできたら100億円をを進呈”というサイトが、エイプリルフール終了後も何度も外部から再アップされ続ける。その企業の上層部に個人的な怨恨を持っていた社員が復讐の手口として、同社製エレベータを使っているホテルのエレベータをクラック、身代金要求をいたずらとして軽視しているうちに、人身事故が実際に起きて…」というのがドラマでの犯人像と目的であった。
「しかし、だ」と思わず口に出してしまい、周囲を見回す。周りに人は居ない。ひとまず用意された部屋に戻りつつ考える。
青年にメール設定がされたPCの用意を頼み、また、皆の携帯アドレスをそれに登録したものを用意してくれ、と伝える。では連絡が来るまでそれぞれホテルで用意した部屋にそれぞれ待機することにします。と言って青年は出て行った。業務に多数ノートPCを使っているので、用意はすぐできます、とのことだった。
風呂に入り、ビールを少し飲みながら考える。
この事件の犯人のそもそもの目的はなんだろうか。
1-ドラマを真似た愉快犯
2-霊能力者のしわざ
先入観を捨てて考えると、その2つのどちらかであるように思える。が、1の場合、青年が言うことをすべて信じるなら、青年もエレベータ会社すらも気がつかないようにエレベータの制御系をバイパスして操る必要がある。ドラマと同じトリックだとしたら、だ。
この場合、最も単純に考えると「青年が嘘をついていて共犯者が居る。あるいは集まっている青年やホテルのスタッフ全員が口裏を合わせている」ことが「事象としては成立」しやすい。が、どうだろうか。そのメリットを見つけることができない。
ホテルについてから、従業員が青年に絶対の信頼を置いていることは分かった。彼の母が責任者ではあるのだが、現場からはまあ「若旦那」と信頼され、盛り立てていこう、という気配が伝わってきた。しかし、このことを「宣伝になるかも!」と行っているというのは、彼らの態度からして想像できない。そこまで幼稚な考え方をしている人々にはどうしても見えない。
青年の単独犯行としても疑問だ。あれだけ信頼をされているスタッフ全員を路頭に迷わせかねないことを、彼がする必要があるとだろうか? 家族となにか確執があるのか? いや、A子とのやりとりを見てもそれはいまのところ感じられない。
2の可能性。
霊能力者の存在、というものを簡単には信じがたい。しかし、一般論にしか過ぎないかもしれないが、それは「霊能力の無い人間」のものの考え方でしかないとも言える。「自分に無いものは世の中に存在しない」では考え方が狭すぎる。
では、霊能力者が実在する、と仮定してみよう。
先ほどの「人格をのっとられたと感覚」これが彼らが持つ能力だとすれば成立はする。また、エレベータの制御も可能なのかもしれない。
となると「ある程度の能力をすでに持っている霊能力者が、大霊能力者となろうとして今回の事件を起こした」ならば成立する。
「これらの事件が霊能力者のしわざではないか、という説は一般には知られていないそうです」とプロデューサは言っていた。しかし、犯人が「一般ではない方=霊能力関係者」だった場合、あのドラマから何かピンと来てしまって調べてみたら…はアリとも言える。
自分がのっとられたという、いわゆる心霊体験をしたせいか、心霊、催眠の線を消すことはできない、という気持ちになってきた。まずは事件の様子を見ながら、B子の件を考えなくてはいけない。
B子の事件は、ドラマでは放映されていない部分だから、彼らに予備知識はない。犯人と思われる霊能力者も、ドラマからはその知識は得られないはずだ。
ここまでのB子の行動は偶然でしかないのかもしれない。が、先にのっとられていたときの“恋愛ジャンキー”のイメージ。これはドラマ制作時の「事件の資料」と酷似している。霊能力者が、過去の猟奇事件の資料を調べていたとしたら、一連の事件の関連性から「エレベータの生贄事件にも関連性が有る事件」と推測しないとは言えない。
また、犯人=霊能力者の意図に「私を都合のいいタイミングで消す」ためには、B子を「手段のバックアップ」として使うのが有効と言える。どこまで想定しているか分からない。が、仮に私がこの現場に呼ばれ「犯行は霊能力によるもの」と断定した場合、エレベータ事故を私が回避する可能性がある。また、私を先に消してしまえば、ドラマでアレンジされた部分を知らないこの事件の関係者を“生贄”にするのはより容易になる。いや、私を込みで“生贄”にしようとしているのかもしれない。
まずは、事件の起きる可能性をひとつずつ潰して行くしかない。
青年にメールをして「君とA子さんだけで部屋に来て欲しい」と連絡をした。
2人がやってきた。
「いろいろ質問があるかもしれないが、まずは一通り聞いてほしい」と切り出した。
「いま、部屋割りというかみなさんはどのようにホテルに居る状態ですか?」
「僕と陸上と侍、あ、陸上は落っこちたほうで、侍ってのはもう一人のあだ名です。この3人が同じ部屋に居ます」と青年。
「私とB子が別の部屋で一緒に居ます。同じフロアです」とA子。
「結構です」と私。「この後少ししたら全員にメールを出しますが、理由は説明できませんが、今後私のことは必ず“先生”と呼んでいただきます。苗字はつけないこと」
「はい」と2人。
「また、これまた詳しくは言えませんが、この事件、外部から催眠術を使える人間により我々が操られている可能性が高い。これもメールで書きます。なんかおかしいと思ったら、熱いお茶と冷水を交互に飲むなどして、なんでもいいので頭をはっきりさせるように。運動でもいいかと思います。自信ないですが」
「は?」と青年。
「続けます。あなた方の間で、いわゆる男女交際をしている方はいますか? 大事なことです。正直に」
「知る限り…いません。ね?」と青年に尋ねながらA子。
「居ないスね。A子が陸上たちと付き合ってないなら、B子は無いッスね」
話題のせいか、急にくだけた感じになった青年につられるように
「ちょっと! ありえないわよ! っていうかB子って若い子駄目だっていつも言ってるし!」
「結構。では男性諸君にお伝えください。少なくてもこの事件が解決するまで、A子さんおよびB子さんに絶対に恋愛感情を持たないこと。あとA子さん、B子さんが私に好意的な発言をした場合“お兄ちゃんがネットで調べたらしいんだけど〜”とかのフリで、とにかくB子さんが私に対してイメージダウンするようなことを言ってください。キャバクラ狂いとかなんでも結構ですから」
「ちょ、それって事件になんか関係が?」と青年。
「今は言えません。ただ」
「ただ?」
「これ以上誰も怪我をしたくないなら、言うことを聞いてください」
「わ、わかりました」と青年。
「さて、もうひとつ」と私。
「この建物の名前は〜」
「あ、単純にA館です。他もBCDです」
「そう。ではBCDにお泊りのお客様を、A館に移っていただくことはできますか? エレベータが故障した、などの理由でどうでしょうか。また、今後予約のお客様をすべてA館だけにお泊りいただくことは可能ですか?」
「えーと、部屋数的には大丈夫です。確認しますが今日から1週間程度はA館だけで行けるはずです。あと、移動についてはなんかお食事とか大目にサービスすればこれまでも特に問題には。ボイラーが故障したときとか。部屋の構造ほぼ一緒ですし」
「結構。では、事件が終わったA館にお客様を集めましょう。で、残念なことに人目につきたくはないだろうが、そうそう他人の言うことを聞かないだろう客が居ます。で、お金が欲しいんですが」
「え。謝礼でしたら」
「ではなくて、封のかかった現金、100万円ぐらいありますか? あの方にお帰りいただくために使いたいのですが」
「あ。なるほど。えー。新札の封のは無理かもですが、現金はあるはずです。確認してきます」
「あと、従業員用のはっぴみたいのをお借りしたい。あなたも着てきてください」
青年はほどなく戻ってきた。はっぴを借りる。フロントに向かい、青年に内線で大物政治家の秘書の部屋に連絡を取ってもらう。「重要なご相談が…」という感じで。
なんどかやり取りがあったが、大物政治家に会えることになった。
「挨拶をしたら、あとは任せてください」と青年に告げ、部屋に向かう。
部屋には政治家と、おそらく本物の秘書だろう男性が居た。
「重要な問題とはなんでしょうか? 手短にお願いできればと思います」
青年が挨拶をした後、秘書が切り出した。
「率直に申し上げます。当ホテルにある種の犯行予告が届きました」
「なんだって!」と秘書。
「エレベータジャックとでも申し上げましょうか。このA館に仕掛けられた装置のようなものは排除いたしました。これから他の館にお泊りのお客様をすべてこのA館に移動いただきます。つまり今よりぐっと多くのお客様がこちらの館内に来られます。それで、ご高名な○○先生にごゆっくりおくつろぎいただくのが、恐縮ですが難しい状況に、というわけなのですが」
「なるほど」と政治家。「で、私にどうしろと?」
「いえ、どうしろなどとはとんでもございません。ただ、もしよろしければ、これからこの支配人代行が近隣あるいは隣接県などの温泉ホテルをご案内いたしますので、そちらにお移りいただければと…」
「また、はなはだ急な話だねぇ。その、ご配慮はありがたいですよ。うん。どうだろな君」と秘書に話を振る政治家。私が言っている意図は彼にはわかっているようだ。「人目につきたくないなら、移ったほうが得策ですよ」という。
「その、ゆっくりと、あまり他の客に会わないですむようなところは…」と言いかけた秘書に
「もちろんでございます。私どもにお問い合わせいただいたような条件にほぼ合致するホテルが、○○県の○○にございます。お車ですと1時間はかからないと思います」と青年。さきほどの100万円のニュアンスですでに調べていたようだ。なかなか頭が切れる。
「ではちょっと支配人代行と細かいお話を、秘書の方とお話させていただいて…」と言いながら、秘書のほうにすっと包みを出す。
ちらりと中を確認して秘書が
「これは?」と。
「お車代でございます」と私。
封筒を横から覗いた政治家が「どうも。これはまたスマンね。お気遣いいただいて…」
「いえ、これくらいは。このたびのご宿泊料金につきましては…」
「結構ですので」と青年が話を引き取る。
やはりこのように家業を大切にしている青年が、自作自演の事件を演出しているという線はひとまず消しておくべきだろう。
あとは秘書用の別室で青年と話を詰めてもらうことにして、私は部屋に戻った。
先に青年に伝えた内容のメールを送信していると、ノックの音。青年だった。
「想像以上にうまくいきました!」とちょっと興奮気味だ。
「まあ意図が伝わったということだよね。やはりあの女性は普通の関係ではないということだろう。あと、料金やホテル移動の件、勝手に申し訳なかった。説明をしている時間も惜しくてね」
「いえ大丈夫です! ホテルもそういうことかなと思って電話で打診済みでしたので。では政治家先生を送り出したら、お客様の移動を始めますのでなにかあればメールなり電話なりを」
言い残して青年は出て行った。
30分ほど後「移動がすべて終わった」旨の電話を青年からもらい、B館に3つ部屋を用意してもらい、そちらに移動した。
まだエレベータは喋りだしていない、ということだが、慎重を期して2Fに階段で移動する。C、D館にも同様に従業員に待機してもらうことにした。
私の部屋に青年たち全員に集まってもらう。
・催眠術のようなもので心を操られる可能性があるので、気持ちを強く持つように。
・今後、面倒でも常に男性3人、女性2人単位、または5人全員で行動するように。
そのように指示をした。効果があるかは分からないが、いまはそれぐらいしか対応が出来ない。部屋に戻ってもらい、男性陣にだけ「もし女性2名に恋愛感情を持っている気持ちになった。あるいは逆にもたれていると思ったらすぐにメールをするように」とメールを送った。霊能力者が「若い女性による恋愛沙汰の殺人事件」を再現しようとしている可能性を捨てきれないからだ。
15分ほど後、B館のエレベータが再び喋り出した、との連絡を受けエレベータホールに集合する。
意識が少し朦朧としてきた。彼らが同級生に見えてくる。来た。霊能力者の精神支配が始まった。パンパン、と両手で自分の顔を張って、大声で言った。
「エレベータの主電源を切れ! 全員大声を出せ!」
「はい!」と大声で返事をした青年を皮切りに、みな「わー」とか「うおー」とか叫んでいる。エレベータの主電源が切れると、頭のもやもやが完全に消えた。
もしや、エレベータをアンテナに霊能力を伝える、というのは本当かもしれない。なぜかはわからないが、電源が切れている間は霊能力の利きが弱いようだ。
青年にC、D館のエレベータの電源も落としてもらうよう連絡をしてもらう。管理の装置は各館別になっているそうだ。
「エレベータが喋り出したら、また同様に大声を出して、キツイようだったら顔とか脚とかバンバン叩いて対応しましょう」と皆に告げる。1回目のときは「催眠術」という意識がなかったからかかりが強かったようだが、今回以降はどうやらこれでなんとかなりそうだ。霊能力者の力は、現状ではそのレベルなのかもしれない。だとしたら「生贄で力を求めている」という犯行動機も納得はできてしまう。
「さて、では第二回めのクイズとまいりましょう〜!」
エレベータが喋り出した。1回目のときには気がつかなかったあることに気がつく。ここはその検証に集中しよう。
前回と同じくルール説明のあと、クイズが始まった。
「わーわー! 先生どうしましょう! うわー!」術避けの叫びを入れつつ青年が尋ねてくる。
「ここは私にまかせてください! あなたは皆におかしいところがないか監視を!」と私も叫ぶ。これはいい。完全に自分の意識のままだ。霊能力に対する恐怖のようなものが薄れてきているのかもしれない。
「さあ、点滅するボタン。まずは10回覚えて再現して押してください!」
「ファイアー!」
「ファイアー!」
エレベータと私が同時に叫ぶ。もう間違いない。ポケットからメモを取り出して点滅を眺める。同じだ。ドラマの問題とまた同じだ。「ファイアー!」は2回目のクイズのときにフリーの人気アナウンサーの口調を真似て収録したものだ。音声のピッチを多少変えて有るが、台詞と間合いが完全に一致している。
クイズを正解し、2つめのエレベータも沈黙した。
「携帯のジャミング装置、あるかな?」と青年に聞いた。あれば事件は一気に解決に向かうのだ。
「あ、ありますよ。結婚式会場にあります。でもそれを?」
「取り外せるかな?」
「あの、ラックに載せてあるだけなんで、すぐにもって来れます」
「じゃあそれ持ってきて。あと、エレベータの背面のトランク、あそこを開ける鍵持ってきて」
「あ。はいすぐに!」
青年が戻った後、エレベータのトランクを開ける。小さい箱から細い紐が出ている機械が両面テープで貼り付けてあった。おそらく送信機だ。
「鍵は、これは全部共通かな?」と聞いた。「ええ。うちは面倒なので全部のエレベータを同じ鍵にしてもらってますけど…」と青年。「この機械、なんでしょうね?」
「説明は後でします。まず、B館のエレベータすべてに同じ装置があるはずです。外しましょう。その後、A館も外します。C館からまたエレベータが喋った、という連絡が来るまでに終わるといいが」
「合鍵ももってきましたので、手分けすれば」
「それはいい。とにかく6人同時に行動しつつ、外しましょう」
結局、すべてのエレベータに送信機はついていた。A館も外した後、C館のエレベータが喋り出した。
「第3回目のクイズは〜」
「もう無い」といいつつ携帯ジャミング装置の電源を入れる。音声は途絶えた。
「わーわー。あ、消えた」と侍。
「残念ながら、犯人を抑えることはできませんでした。が、これで確信がもてました。事件は解決です。残りの装置を外しましょう」と青年に告げる。
全ての装置を外した後、私の部屋にまた集まってもらう。
「この事件は、どういうことだったんでしょうか?」と青年が尋ねる。
「詳しくは言えません。ただ、解決はしました。また、再発防止、まあ、しないと思いますが、防止のためにエレベータの電源室の鍵、トランクの鍵を新しいものに換えてください。電源室については簡易な鍵でもいいから、追加もしたほうがいいかもしれない。あと、もし再発した場合は、電源を切って、その間に携帯ジャミング装置をかけた上でエレベータ内を探すと、まあこの手の装置が見つかるはずです。いや、再発はないと思いますが」
事件の背景を青年たちは知りたがったが、それは勘弁してくれ、と説得した。渋々ながら承知した彼らに、青年を残して部屋に戻ってもらった。
「謝礼の件なんですが」と私。
「はい。あの、残りを振り込みますので口座を…」
「いや、逆にお返ししたいんですが」
いえそれは、などと押し問答が始まる。私は返したかったが「返す理由を聞かせてくれ」と詰め寄られ「たいしたことをしていないので」という理由では納得してもらえない、の繰り返しだったため、いただいたものを返すのは諦めた。
「では犯人を捕まえるためのお金に使います」と言い、帰り支度をすることにした。せっかくですからもう少し休んでいっては、などと薦められたが、早く東京に戻ったほうがいいので、と断った。
東京に戻り、1週間ほどが過ぎた。プロデューサからメールが来た。
「この間ご紹介いただいた会社の件ですが、スポンサーの関係で放映が出来なくなりました。お詫びをかねて、先方に一緒に言っていただければ幸いですがご都合は」といった内容。
「いますぐにでも行けますよ」と返事をしたところ、間をおかず返事が来た。携帯からだった。
「では○○時ではいかがでしょう」とのこと。先方に確認をし、OKである旨返事を返した。
子一時間後、都内のあるデザイン会社に私とプロデューサは居た。社長である知人が「いや今日はみな出払ってましてね。お好きなものどうぞ。100円はここに」と。
この会社は「より快適な引きこもり作業」をテーマに、パーテーションや壁の全てをベンダーで埋めてある。ソフトドリンク、酒類、つまみ、ハンバーガーやそばうどんの類まで買える。料金はすべて100円。ベンダーのリース料や諸々のコストにあてるため、無料ではない。古くからの知人が経営している会社の事務所が面白いので、情報番組などで紹介してみては、とプロデューサに連絡をしたのだ。
結果、プロデューサが持っている情報番組のスポンサーと競合、あるいは同業他社のベンダーがずらりと並んでいるのは、情報バラエティとしても放送しにくい、ということだった。
まあ、ねえ、などと雑談をして「じゃぼちぼち失礼しますか」とプロデューサに言ったところ、様子がおかしい。
「どうしました。体調でも?」
「いえあの。すみませんちょっと電話を1本」と立ち上がり部屋の隅に行くプロデューサ。と、エレベータが喋り出した。ドア、兼エレベータ、という構造なのだ。
「目の前で、とは大胆ですね」と私。
「いや? は? なんのことでしょう。っていうか聞いたでしょう! ドラマと同じ現象が!」
「ま、二度とおきないでしょうがね」と言いながら、オーディオの裏に隠しておいた携帯ジャミング装置のスイッチを入れる。
「圏外になっちゃったから。もう無理ですよ」と私。
「え…」とプロデューサ。
「まあ座って話しましょうよ」と言いながら鍵でエレベータを開き、中にある傘立てを取り出して再び鍵をかけた。
「どうせエレベータには乗れませんよ。鍵がないと」と私。
「いやそのまあ、でもドラマと同じ現象がね!」とプロデューサ。
「もういいでしょう。○○県の○○ホテルも、あんただよねやったの」と私。
「な…!」絶句するプロデューサ。
「んじゃ私がわかってること、全部お話しましょうか」と私。
「さっき言ったホテルの息子さんから相談されたんですよ私。あのドラマみたいにエレベータが喋り出したってね。で、言われても困るけど、と思いつつ行ってはみたんですよ」
「で、私もちょっと意識がおかしくなって。人格のっとられたようなね」
「な、何を言ってるんでしょうねyaeさんね。おかしいですよね」と社長に話題を振るプロデューサ。
「いやなんかオモシロそうな話じゃないすか! 聞きましょうよ」と社長。
「あんたが持ってきたあのドラマの話。あれってホントに全部実話らしいね。で、人格のっとられながらも、必死で最初のクイズを解いたんですよ。なんで同じ問題にしたの? ドラマを見ての模倣犯を演出したかったのか、ま、単に音声ピッチを換えるぐらいしか時間がなかったのか」
「音声ピッチ?」と社長。
「あのドラマの」と私。
「ぎ、技術的なことを外部の人間に漏らすのは守秘義務に…」とプロデューサ。
「あのドラマを撮ったとき」と無視して私。
「エレベータの制御系をのっとるためのギミックが必要だった。霊能力者のしわざであることは伏せるということだったから」
汗を拭いて何かを念じるようなプロデューサ。
「私はね。リアリティを検証しないと内容が薄くなるとあんたに言った。あんた言ったね。“その通りです! ぜひ実験をしましょう!”と。熱心な人だと思ったよ。まさかこんなことだとは思わないから」
プロデューサは動かない。
「制御プログラムのエンジニアに取材したとき、あんたいろいろ質問してた。いやに詳しいなと思ったんだけど、まあ、勉強したのかな、と思ってた。で、あーだこーだで理論上可能ということから、低出力でも近くに発信機があれば、無線経由で制御系をコントロールできることが分かった。で、携帯電話のプロトコルでその発信機を動かせるってとこにあんた異常に固執した。“PCでやるより、携帯でコマンド送ったほうが絵になりますよ!”ってね」
「へー」と社長。
「あんたが考えてたのは、ドラマじゃなくて自分が使うためなんだよ」
「そんな無茶な」と半笑いのプロデューサ。しかし、目が笑っていない。
「あんたPCはデスクトップ派でノート持ってない、って言ってたね。で、携帯でメール打つのが異常に早い。携帯得意だよね。PCのアドレスでメールしても、返事は携帯からが多い。まあ、でもそれはね。確かにPCよりは携帯のほうがどこでいじってても目立たないし。それはあまり重要じゃない」とつられて半笑いになる私。
「装置の仕組みが分かってからは、話の整理がついた。あんたは霊能力がある。そして長年かけて調査した“エレベータの生贄”をどうしても実現してみたかった。もっと力が欲しかった。そうだろ?」
「霊能力!? 私が!? 何を言ってるんでしょうねこの人は」
大汗をかきながら、まだ何かを念じているようなプロデューサ。
「あんたのこといろいろ調べさせてもらったよ。国立の○○大学で、情報工学専攻してたんだね。○○ホテルの近くだ。で、卒業まで1年を残して、単位はほとんど取れて、テレビ局の内定もとってたあんたは、エレベータのメンテ会社でバイトをしてた。当時“生贄”のことを知っていたかどうかはしらないが、バイトはしてた」
一息入れて缶のアイスコーヒーを飲む。誰も喋らない。
「いつあんたが霊能力を持ち始め、いつ伝説のことを知ったのかは分からない。ただ、ドラマのプロデューサとして実績を積んで、連ドラ1本は自由にできるとこまで来てあんたはついにこの企画をドラマ化することに踏み切った。私という外部の人間をやとったのは、まあ企画を内部で揉んであーだこーだなるのがイヤだったのか、模倣犯が出たとき、まああんただけど。そんときに局内の人間以外だったら責任かぶせやすいとか、いろいろだろうね」
やはり誰も喋らない。
「あんたは企画の中で“実話を伏せたいところがある”と言っていたね。恋愛ジャンキーの殺人事件の部分。あれは死体の見せ方によってはカットしなくてもいい部分だと私は思った。だがあんたは全面カットにこだわった。ドラマでオンエアすれば、事件を相談された人物はドラマを見て、そこに警戒するだろうからね。しかしだ、再放送を週に2回、というのも異例だけど、あんたテロップ入れ自分でやってるね。まわりには“今回リキ入れてるから”とか言ってたみたいだね。で、入れたのはテロップだけじゃない。サブリミナル映像だ。さすがは技術系あがり、たいした腕だよ」
「サブリミナル…」と社長がつぶやく。
「効果を疑問視する説もありますがね」と私。
「あんた、恋愛ジャンキーの事件に関するエピソードや映像を入れたよね。サブリミナルで。私や会社の名前も入ってた。事件がおきた○○ホテルの誰かがドラマの再放送を見ていて、相談にのった私を恋愛ジャンキーの手口で始末できれば一石二鳥、ということだ。“温泉ホテル 秘書 愛人” なんてものまであった。誰とは言わないがほんとに居たからね。偶然かもだけど。あとは本放送の視聴率を稼ぐようなあおり文句も入っていたが、まああの短期間でよく編集したもんだ」
「わかった」とプロデューサ。「サブリミナルを抑えられたんじゃあ、どうしようもない」とつぶやいた。
「そう。企画書に載ってない。つまり、私とあんたしかこのドラマにあの要素を入れるかどうかを知っている人間はいないんだ。本放送のマスターには入っていない。再放送の編集をしたのもあんただけだ。だいたい、禁止されているサブリミナルを命令されたら、大概の編集者は直属の上司に相談するだろうから。あんたにしかできないんだ」
「他にどこまで知ってるんですか」とプロデューサ。
「あんたがドラマのオンエア後、バイト時代の同僚、まあメンテ会社の今の社長だね。彼のところを訪れて“昔が懐かしい”かなんか言ってメンテに同行したという事実。そんときいくつかホテル回って、ドラマと同じH社のエレベータを使っている○○ホテルにあんたは目をつけた。社長の鍵束から型取って合鍵を?」
「ヤツにあったんですか?」とプロデューサ。
「名物プロデューサの交遊録、みたいな番組の下取材で、と言ってね」
「なるほど」と軽く苦笑するプロデューサ。「他には?」
「あんた1週間休暇取ってるね。ホテルのエレベータが喋り出すちょっと前からだ。他のホテル泊まってたのか、あのホテルかは分からないが、とにかく現地に居た。電源を切られている、と思ったら電源室に侵入して、手動で入れなおしていた、だね?」
「手動とは大胆だな」と苦笑いする社長。
「まあ、エレベータの監視が中心になりますし、通常営業してますから。また、エレベータが喋った段階で“不思議なこと慣れ”しちゃってたのかもしれませんね。ホテルの人も。合鍵が作られている、ということさえ想像できれば話は違ったんでしょうが」
「ひとつ教えてください」っとプロデューサ。
「どうぞ」と私。
「あなたもこの社長も、どうして私の霊能力が通用しないんでしょうね」
「私はね。霊能力者というものにさほど興味を持ったことがなかった。前にも言ったけど」
「ええ」
「で、最初にエレベータが喋って、あんたの術にかかったあと、必死にあんたの術に耐えた後、どうも私にも有る程度の霊能力が有ることがわかった」
「え…?」
「おかしいだろ。でも、そうらしい。あんたにあやつられて目覚めたのかもしれない。とにかくあんたの術は私にはかからなくなった」
「どこで気がつきましたか。私がやったということに」とプロデューサ。
「第二回のクイズがまったく同じ問題だったとき」と私。
「1回目は“ドラマを見ている人間なら、同じ問題が出てくるから安心”と思わせるためのブラフかもしれないと思った。2回目、少し冷静になってみると、あの音声はドラマで使ったもののピッチを変えたものだと気がついた。私にとってもギャンブルだったが、メモを見て答えても問題を変えてこない。ならばこの装置を使っているのでは、と思い3回目で携帯ジャミングをしたら切れた。あんたはエレベータそのものを操るまでの霊能力は持ってない。だからこそドラマでそれを操れる装置を完成させておくことが必須だった。その装置も一度完成してみれば、技術系上がりのあんたには自作することはなんてことはない。そう。この傘立ての中に、きっとあるだろうそれを」
「やっと」とプロデューサ。
「やっと自分で好きに番組作れるようになって、ようやく“儀式”が出来るお膳立てまでこぎつけたのに…」
ふらっ、と立ち上がり、傘立ての中から、ホテルにあったそれと同じ送信機を取り出して、ぱちりと音を立てて、机の上に置いた。
「まさか霊能力者が探偵役に、いや、最初に霊視をして何も感じないと思って安心していたyae氏が霊能力者にとは、ね」と社長。
ん? と何かに気がついたように社長を見るプロデューサ。
「あ、あなたも…」
「この方は警察の方。霊能力の有る方で捜査にも使われるそうだよ」と私。
「え…ということは…」とプロデューサ。
「こんな会社、あるわけねーだろ」と私。
「…」
「全部仕込み。H社のエレベータでドア直結、鍵かけられるタイプのを使ってるビル探して借りて、ベンダーをリースしてこの人に相談した。他の社員は劇団の人。全部仕込み。なにもかも仕込み」
「そんな…」
「○○ホテルで結果を出せなかったあんたは焦ってるはずだ。そこにまた私がらみでまあ、義理で取材に行った会社がH社エレベータ。オンエアを断る理由は十分にある。で、そのお詫びということで私を引っ張り出せば、儀式とやらの成功と、私の始末が出来る。美味しすぎる話ではあるが、いまのあんたなら乗ってくると思ったよ」
「私の敗因は、殺され役を完全に仕込めなかったこと、ですね」と苦笑いを浮かべてプロデューサ。
「あんたが探偵役をやるように仕込んでいたら、完全犯罪成立したかもしれないな。じゃ、行きましょうか」と社長こと刑事。
「仕込むなら全部仕込む。基本だよ。元プロデューサ」
※何回か見たことが有る夢です
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旅館で働いている。実家が旅館を経営しているので、その手伝い。自分はまだ学生だ。
廊下から、ひとつの部屋に入る。奥の部屋から掛け軸を取って来ることが目的だ。
掛け軸を取リ出して、元の襖を開ける。と「やってしまった」と思う。襖の先に元の部屋がない。○で囲まれた「禁」いう文字が描かれた壁になってしまっている。
元々この建物は武家屋敷を移築したもので、掛け軸などを置いて有る部屋のさらにひとつ奥の部屋が殿様の寝室だった。そのため、ひとつ手前の使用人などが控えているこの部屋には、多くの仕掛けが有る。襖を開けたままにしておかなければいけなかったのに、入ったときに閉じてしまった。それで仕掛けが作動して、この部屋がまるごと地下に降りてしまったのだ。
元に戻るには、この部屋の襖を正しい順番に開かなくてはいけない。いや、開くだけではなく、一度開いたものを閉じてこちらを開いてからさらにまた開く、などの段取りがあるのだ。
その昔は、使用人たちは非常にシステマティックに働いていて、ある種のIDカードのようなものを懐に入れて行動していたという。部屋を移動するときはその札を決められた場所にかけてから入るとか、誰かに渡してから入るという仕組みが厳守されていて、テロ防止および、うっかり部屋を下に下げてしまった場合「誰がいつから居なくて、部屋がいつ下がったか」という条件が揃えば部屋を持ち上げたという(もちろん、テロに備えて武装した状態で)
しかし、現在はちょっと状況が異なる。この部屋の存在、およびその奥の部屋の存在と仕組みなどは、家族しか知らない。なぜなら、この部屋と奥の部屋を「部屋ごと金庫」として使っているからなのだ。何がどこにどう隠されていて、それにどれだけの価値があるものなのかは、今は祖母と父しか知らない。家族の中でも2名だけが知る仕組みであり、その仕組みを知っているのは母と私、これもまた2名だけという仕組みなのだ。
携帯を見る。もしやと思っていたが、完全に圏外だ。どういう構造かは知らないが、単に地下に降りるだけではないのかもしれない。もしくは相当に深いかだ。そもそもの目的は「不法侵入者とみなした」場合に数週間放置して酸欠ないしは餓死させるための部屋なのだから。天井や壁は今で言うトリックアートというのか、巧みに塗装されていて低くは見えないが、実は2mほどしか高さがない。
いずれ自力で戻るしかないだろう、と考えた。父母は仕事中、しかも父は会社員との兼業なので今は会社に居る。祖母は完全に隠居状態なので、いつどこに出かけるかわからないし、常にこの部屋のことを意識してはいないだろう。
開け方は、もちろんこの4名は知っている。というより他の人間は知らない。開け方の手段は口伝、しかも、一切の記録を禁じられている。
いくつかの記憶方法がある。
・川柳(あかさたな から始まる5つの川柳に開け方のヒントがある)
・子守唄の中に隠されている
・花札のいくつかの役の中に隠されている
私は全部を教えられていたが、花札は苦手なので「それは使わない」と自分で割り切っていた。子守唄と川柳は覚えているはずだ。
…。
まずい、川柳は全部思い出したが、意味を思い出せない。これはかなり高度に言葉が隠されているもので、元々のオリジナルの記憶法だったらしい。ただ「高度すぎる」「カルチャーが当時とは異なって思い出しにくい」ということでこの家オリジナルの子守唄が作られたのだそうだ。
歌を思い出す。「鶴とウサギとすっぽんと○○」が競争して誰が勝つか、という歌なのだが、○○が思い出せない。
「亀の背中をぴょんと跳ね 鶴の首をちょいと刎ね これはしめたと思ったウサギの耳を掴んで八つ裂きに 笑った○○が 血まみれで 獲物をまとめてたいらげた」
思い出せない。「○○にそんなことできるのか?」と子供心に思った、というのをヒントに思い出していくしかない。段取りは歌詞のまま進めばよかったはずだ。
ある襖の横にすっぽんの形をした置物がある。それを背中側に向けて真ん中側に進み、中心の畳をジャンプして強く踏みつける。次にその姿勢から顔を動かさず水平チョップの形で右腕を払う。その方向にある襖を一度開ける。顔が向いていたほうの襖を開ける。ここから○○から連想される言葉に準じて8回正しい順番で襖を開閉して、最初に踏みつけた畳をもう一度踏むというか、どすんと座る。
どすんと座る? なぜだった? 二つの点ではなく、面で畳みに体重がかかっていないと最後の起動スイッチが入らないからではなかったか? そうだ。そういうイメージのモノだ。生き物ではなかった! 臼! 臼だ! 「血まみれ」はダミーの言葉でそれに意味は無いのだった。正しいキーワードは臼と最後の「どすん」を「尻餅」と考え、餅作りを成立させるための「きね」を真ん中に入れて八文字。最後はしりもちではなくて、やはり「作るためのもの」である「もちごめ」 順番に並べて「うす きね もちごめ」 「あかさたな」はやがて使わなくなるから「あいうえお」で「あいう」までの3文字の位置にはいる言葉は正面を、それより下は右手が指したほうを開閉だった。そうだ思い出したぞ!
つまり
う-正面閉める
す-正面開ける
き-正面閉める
ね-右側閉める
も-右側開ける
ち-正面開ける
ご-右側閉める
め-右側開ける
違う…。これだと右側が開いたままだ。両方閉まっていないと駄目なはずなのに。この文字列の中にイレギュラーな要素があり、それを例外措置にすればよかった気がする。
あ!「ご」だけが濁音だ! 濁音は逆に扱う。つまり「ご」は正面!
う-正面閉める
す-正面開ける
き-正面閉める
ね-右側閉める
も-右側開ける
ち-正面開ける
ご-正面閉める
め-右側閉める
よし成立した!
さっそくトライすることに。手順通りにやり、できるだけ「どすん」と座る。
「かちり」と金属音がした。部屋が動いているのは分からない。が、到着すればすっぽんの置物のほうの襖が開くはずだ。まだ開かない。動いているのか居ないのか、全然分からない。途中で部屋が回転するらしい、と聞いたことがあるがいまもしかしたら回っているのだろうか。不安になり携帯を見る。圏外…バリ3!
しゅっ、という音がして、襖が開いた。助かった…。と、メールが複数着信。うわ彼女から「どこに居るの?」メール連続着弾。やばいやばいえーと「地下にある骨董屋に掛け軸を取りに行くように…雑談盛り上がりいま帰るところで」おかしいか? いやまあなんとかなるだろう。ウチ旅館なのは知ってるし。
細かいところを覚えていないのですが以下のような内容の夢でした。
夢と気が付かずに最後まで進んだので、非常にじりじりした感じで起きてからもしばらく疲れていた、という感じでした。
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○卒業制作でドラマを撮らなくてはいけない。
○シナリオは生徒全員があらかじめ課題として書くものだった。が、選ばれたものはシナリオではなく、小説の状態のものだった。女子生徒が書いたものだった。
○シナリオ化を誰がするか、というところで話が停滞してしまっている。空気が明らかに私に書け、というものになっている。面倒だなあ、と思いつつ、このままにしておくと誰も着手せず、夏休みが終わってしまい提出に間に合わなくなるのは明らか(卒業できなくなる) なのでやむなく書くことに。
○シナリオ化は順調に進み、あと2日もあれば上がる、というメドがたった。そこで各人の役割(プロデューサ、ディレクター、アシスタントディレクターなど番組制作に必要なスタッフすべて)を決めなくてはならない、ということを全員忘れていたことに気が付く。
あわてて決めようとするが、ディレクターを誰にするかが決まらない空気。というか、私を含めて3人のうち誰かだろう、という気配になっているが、誰を選ぶかに周囲が気兼ねしている様子。
○「じゃ俺、予算管理と撮影許可とか管理系という意味でのプロデューサやろうかな。AP誰かやってくんない?」と切り出す。それで全体が動き出しなんとか決まる。
○APは以前付き合っていた女子生徒に決まった。なんか面倒だな、と思うが、APが居ないとひどいことになりそうなのでしかたがない。
○ディレクター担当の生徒と話す。「学校から出る補助予算では足りないだろう」という結論が出る。資金調達をどうするか、という話になる。
・一人当たり3万円出せば足りるので、それを出してもらう。
・AD担当の生徒の8割ぐらいを今からバイトさせて、その金を使う。
・誰かの親に借金をして、撮影終了後全員でバイトをして分割返済。
そういう案が出る。APの女子生徒が「ウチの親に言えば借りられる」と言い出したので、そうするか、という話になる。ADの8割不在および「制作はしておらずバイトをしていた」というのはマズイだろう、ということもあり。
○撮影許可が取れない、機材が借りられない(レンタルがどこも貸し出し中)、天候不順などトラブルが山積み。全然撮影が進まない。
「もう後半をシルエットだけのCGアニメにするしかない」という意見が出る。外注に出す金はないよ、というと、ある男子生徒が「CGなら俺にまかせてください。フヒヒ。サーセン」とか言い出した。鬼才現る、と盛り上がる。
○制作期間不足での「後半CGアニメ」を「新しい表現へのトライ」と言い張ったのが効いたか「最優秀卒業制作賞」をもらった。こんなんでいいのかよ、と思いながらも、今後の借金返済のバイトの相談を皆でする。借りたお金は5万ぐらいしか使わずに済んだので、均等割りで行くとバイトをしなくても払えるものは今払い、やはりバイトが必要というものは来月末に提出、ということで決着。予算が一番心配だったので、安心する。
※かなり変わった雰囲気というか風景の夢でした。
推理小説家の書生のような暮らしをしている。
「小説の題材にいいと思うので、一度あってほしい」と以前連絡があった人たちが今日は来ている。
目玉がひざにも有る、という女性がそれを編集者と私に見せている。へそからなにかエイリアンのような顔が出る。カメラで撮影する関係もあり、距離を取っているのだが、それでも気味が悪い。
「宇宙人じゃないのこいつ」と編集者が小声で言う。もちろん本気で言っているようには思えないが「いずれ小説の題材にはならない」と思っていることはその口調からわかる。
「まあ、特殊メイクだと思います。それの出来としてはかなりのものだと思いますが、だからといって確かに小説とは関係ないですね」と答える。
女性は女の子と男の子を連れてきている。年下の男の子のほうが、女性がなにか出すと合いの手っぽくしゃべるのだが、口調が昔の見世物小屋のオヤジみたいだ。
小説の題材、ということでお金が欲しいのだろうけれど、そんなことより自分らでそれこそ見世物小屋でもやったほうが儲かるんじゃないだろうか、と思いつつ「先生には私たちからお話をします。なにかございましたらご連絡差し上げます」と言ったところ、はいはい、と納得して帰っていった。特に粘られたり交通費などを要求されることもなかった。
彼女らが居たときに、実はレントゲンで撮影をしていた。現像が出来たので見てみる。と、目玉や腹部の顔は「外から貼り付けたものではない」ことがわかった。本物か、あるいは大規模な手術で取り付けたものとしか思えない。
「だからと言って」
「小説にはなりませんね」
先生にはレントゲンとともに説明をした。少しだけ笑って首を小さく横に振った。「小説家として興味は無い、ということでよろしいですね」と言うとやはり小さく笑って首を縦に振った。
先生は滅多に喋らない。首の動作と手の動きだけで意思の疎通をする。例えばなにかを食べる動作をしたときには、その動きで「ステーキですか、ハンバーグですか」などと聞く。その中に正解があれば、先生は私に向かって指を指す。「正解!」という風に。ややこしいものが食べたいときは、原稿用紙に書いて見せてくれる。
喋れないわけではない。「私は声を出すのが面倒なので、動作か文章で伝えます」と一番最初に言われたし。
先生の部屋から出て、作業室のほうで小説の原稿の整理をする。事務所は先生が居る個室と、作業室しかない。作業室には小さいキッチンと、私の机とPC類がある他は、会議室のようなつくりになっている。私は1日のほとんどをこの場所で過ごす。1人のときもあるが、大概は編集者が居る。今日は一度出て行ったが、自分の会社に居なくて大丈夫なのかな、と心配になるほどこの人は帰らない。
いま先生が進行中の小説はあかさたな〜 の文字列が順次決まった箇所に入っている文章だと言うのだが、何度読んでもその意図が分からない。文章として不自然になってでもそれを成立させているからだ。私はそれが「成立しているか」のチェックをして先生に報告するという作業をしているが、読んでいて非常に疲れる。元々難解な文体なのだが、今回はそれとはまた違って面で疲れる。
編集者が「取材に行く時間だよ」と事務所に顔を出したので、一緒に行く。先生の原作がドラマになるのだが、その撮影現場が近くの学校なのだ。
監督に挨拶などをしていると「そうだエキストラで出てくださいよ。話題になるから」と急に言われる。まあ通行人ぐらいなら、先生の助手も出演、というひとネタにはなるだろうから引き受ける。と、よく聞くと「若いころの先生の役」だそうだが、そんなのを自分がやっていいのか? というかそれエキストラじゃないじゃん、と疑問に思うが、台詞がない場面だったので何回か撮って無事終わる。先生は若いときからもうあまり喋らなかったのかな、と思う。この監督はよく打ち合わせに来ていたので、そのへんも取材していたのかもしれない。取材といっても、メッセンジャーで返事をする先生に監督が打ち返すまたは口で尋ねる、という感じだったので内容はよくわからなかったが。
帰りましょうか、と編集者に言う。と、その敷地の中でなぜかグラビアアイドルの撮影会みたいのが始まる。これはもうけた、と撮影をするが、持っていたのはさっきのレントゲンのカメラだった。教室の中に普通のデジカメをおいてきたのを思い出して取りに行く。土足禁止だが、誰もいないだろうとそのままで取ってまたすぐ出る。
「レントゲンでグラビア撮影とは新しい。さすが先生」と編集者に冷やかされる。が、彼もがんがん撮影している。ドラマ取材用にやたらとでかいデジカメを持ってきていたのだ。
一通り撮って事務所に戻る。編集者も一緒だ。もうすぐ出版する小説の最終的なチェックを行うのだ。見本刷りが出版社から上がってきていた。
「R・G・B」というのが今回のタイトル。「レッド・グリーン・ブルー」ではなく「レッド・グリーン・ベルト」または「バンド」だという。先生がそこをまだ悩んでいて、最終的には全文検索で置き換えるとのことだ。スペルはBだったかVだったか思い出せないが、とにかくスペルによるトリックだという。執筆中ははまだ書生になっていなかったので、中身は自分はよく知らないが、10数冊に小分けして装丁されている。版形などもバラバラ。書体やらも一冊ごとに違う(手書きの複写まである) そこに今回最大のこだわりというか、それそのものに