入院したようだ。という意識。
※自分の容姿や年齢は、現在のものに近かったり、極端に若い(少年)に変わったりしました。また、それぞれの役割の人物は現実とは異なっていました。
病院といっても、ちょっと変わったつくりになっている。渡り廊下で学校やオフィスビルに連結されている。学生はそれぞれ「小・中」「高校・大学」という単位でまとめられていて、違う学校の生徒達が、たとえば「中学の授業」という形で「入院中ではあるが必要な授業は受けた」形を取れるものだ。オフィスはSOHO的な小部屋がたくさんあり、コピー機などは共用する形だ。
廊下を歩いている。自分の病室を探しているのだ。しかし、時々自分の名前を忘れそうになる。というより、はっきり思い出せない。が、部屋の札を見て歩いていると「あ、ここだ」と思えたところがあったので入った。
家族が居た。友人や家内も居た。「どこに行っていたんだ」という視線を感じる。寝ていないといけないのだろうと思い横になる。
家内を除きそこに居た人たちが帰った後、別の友人がやってきた。パジャマ姿の女性を連れている。誰だっけこの人。なんでパジャマなんだろう、と思う。
友人は差しさわりのない話をしていたが、家内が席を外したときに
「あのときの○○さんですよ。彼女もこの病院に入院してるんです。偶然にしても、ですよね」と意味ありげに笑う。
ああそうだ、と思う。この○○さんという女性は彼と交際をしていたのだが「別れてきました」と私の部屋に押しかけてきて、なし崩しのように短期間だが交際したのだった、と思い出す。
「懐かしいわね。昨日のことのようだわ」と少し涙ぐんで女性が言う。昨日のことのよう、と言ったが、彼女の容姿は当時のままだ。15年ぐらい経っているはずだというのに。
ふと鏡を見ると、自分も若くなっている気がした。同時に「ここに居てはいけない」と思い「ちょっと手を洗ってきます」と言い残し、その場を逃げるように去った。
しばらく歩くと、また自分の病室と思われる場所に来た。なにか古い日本家屋のような内装と家具。病院という雰囲気ではない。
ベッドが二つあり、片方にやはり家内が寝ていた。点滴をしている。なにか同じものを食べて食あたりでもしたのだろうか、と思う。いつのまにか私も点滴を持っていた。
ベッドに横になり、和箪笥のような家具のほうをふと見て初めて気がついたが、その上に布団を敷いてもう一人女性が寝ていた。150cmに届かないだろうほど背が低いが、子供ではないようだ。
家内が治療を受けるため他の部屋に移動した。医師が来るのではなくこちらから行く仕組みのようだ。しばらくして私も呼ばれたので出ようとすると、寝ていた女性が箪笥から降りて近づいてきた。熱があるのか顔が赤い。見たことがあるようなないような顔だ。
「ねえ。今月厳しいんだ。お小遣いちょうだいよ。ただで、とは言わないからさ」
何を言っているのだろうかこの人は。というより誰なんだあんた一体、と思いつつ、少しは渡してやろうかと思うが、財布も見当たらないし面倒なのでそのまま出た。
このあとも、同じようにいろいろな内装、いろいろな女性がいる病室に入っては出る、ということを繰り返した。みなどこかで見たような、何かの関係があったような気がする人たちだった。私の姿や年齢は、その部屋に出入りするたびに異なるものになっていた。私の様々な世代を象徴するような病室と女性達。
だが、決定的なことは何一つ思い出せない。これは本当に自分の生きている現世なのだろうか、という気すらする。
最後に、ひとつのドアがあった。やわらかい感じの照明が少し漏れていて、何か宴会でもしているかのような華やいだ感じの笑い声などがする。子供も何人か居るようだ。犬や猫も居るようだ。とても暖かい気配がする。
「あなたも入られては。ここに居てもいいんですよ」どこからともなく若い男性の声がした。
ドアノブに手をかけた。が、自分はここにいていい人間ではない、という気持ちがして、右側の通路に向かって歩き出した。この先はどんどん薄暗くなって居るようだ。
Posted by yae at October 11, 2006 12:41 PM